研究実績の概要 |
「亜硝酸塩による白色脂肪細胞からベージュ細胞への転換機構の解明」について、マウス脂肪前駆細胞である3T3-L1を分化・誘導するとともに亜硝酸塩を添加して細胞中のトリグリセライド(TG)生成を確認したところ、亜硝酸塩により細胞内TG濃度は減少した。一方で亜硝酸塩は細胞の分化に影響を与えず、脂肪細胞の褐色化(ベージュ化)に関係する分子の発現を増加することを確認した。同時に、亜硝酸塩は脂肪分解を促進する分子群の発現を増加し、これらの結果より亜硝酸塩は脂肪細胞の分化には影響を与えず、亜硝酸塩は白色脂肪細胞をベージュ細胞に分化誘導を促進している可能性が示唆された。 ところで、3T3-L1細胞においてAMPK活性化が褐色化を誘導するということが報告され、我々は亜硝酸塩がHGEC細胞でAMPKを活性化することを報告していた(Biol. Pharm. Bull. 40, 1866, 2017)ことから、同様の機構が3T3-L1細胞でも起きている可能性を推定し実験を行った。その結果、3T3-L1細胞において、亜硝酸塩はAMPKのリン酸化(AMPK活性化の指標)を起こすこと、さらに、亜硝酸塩の添加により脂肪細胞の褐色化に関係する分子:PGC1αの増加をAMPK阻害剤であるBML275の併用で有意に減少することが示された。また、高脂肪食を与えた肥満誘導マウスに亜硝酸塩を投与した実験でも、脂肪細胞において褐色脂肪関連分子であるPGC1αとUCP1の有意な上昇を確認している。 これらの結果より、従来報告されていた硝酸塩による脂肪細胞の褐色化は、硝酸塩が体内で還元されて生成する亜硝酸塩による可能性が高く、そのメカニズムにはAMPK活性化が関与していることが示唆された。
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