研究課題
RyR2の活性異常は、異所性の興奮を起点とする心室性不整脈を引き起こし、若年者の心臓突然死の原因となる。RyR2活性異常が関与する代表的疾患として、RyR2の変異から発症するカテコラミン誘発性多型性心室頻拍(CPVT)および慢性心不全が挙げられる。これらの不整脈に対し、既存抗不整脈薬が抑えられない症例が報告されており、よりよい抗不整脈薬が求められている。申請者らは、異所性興奮の始まりが筋小胞体Ca2+遊離チャネルである2型リアノジン受容体(RyR2)からの自発的Ca2+遊離である事に着目し、RyR2を抑制することが抗不整脈作用となると考え、これを検証する事とした。2019年度から2021年度にかけ、まずハイスループットスクリーニングによりリード化合物を見つけたのち、化合物の構造展開により高親和性かつ特異的なRyR2阻害薬を得た。そして、このRyR2阻害薬の効果を確かめるため、2種類の心不全モデルマウスおよび4種類のRyR2変異CPVTモデルマウスを導入し、繁殖を軌道に乗せた。2022年度には、抗不整脈作用の検証法の基盤を完成させ、実際にこの新規RyR2阻害薬の効果を、上述のモデルマウスを用いて検証した。その結果、我々の開発したRyR2阻害薬の予防的投与は、RyR2変異マウスにおいてみられるカテコラミン誘発性不整脈発生を抑えること(予防効果)、また、重症モデルマウスの日常的運動時に発生する自発的不整脈を停止させること(停止効果)が示された。これらの効果は、これまでによく用いられている既存抗不整脈薬の効果より優れていることが分かった。以上より、RyR2阻害薬が抗不整脈効果を持つという仮説は実証されたと言える。
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