研究実績の概要 |
最終年度である今年度は、薬物開発や臨床の場において重大な問題である薬物誘発性不整脈の危険性予測手法を提案するため、仮想的な薬物の影響下における活動電位のシミュレーションや予測の際に用いるべきプロトコルの有効性の確認を行った。前年度はO‘Hara-Rudyのヒト心室筋細胞モデルを用いて3種類の薬物(amiodarone, bepridil, terfenadine)の影響下における活動電位のシミュレーションを行うことでEADの発生要因を検討した。その結果、L型カルシウム電流(ICaL)に対する薬物効果の違いがEADの発生頻度に影響していることが示唆された。今年度は、本研究の最終目的である薬物誘発性不整脈の発生予測の手法の提案と有効性の確認を行った。前年度の3種類の薬物に加え、薬物の特性を網羅的に変化させた仮想的な薬物モデルを構築し、この仮想的な薬物モデル下での活動電位のシミュレーションを行い、EADの発生の危険性が高いICaLに対する阻害の特性を電位依存性の点から明らかにした。さらに、本研究で明らかになった、危険性が高いICaLに対する阻害特性の電位依存性を実験的に確認できるプロトコルを提案した。このプロトコルの有効性を確認するため、EADの発生頻度と本プロトコルによる予測結果をシミュレーションにより比較確認すると高い相関性が認められた。これらの結果により、薬物誘発性不整脈におけるEADの発生危険性を予測するには、電位依存的ICaL阻害特性を本研究で提案する手法により計測することで可能となることが明らかになった。
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