研究課題/領域番号 |
19K07107
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
森谷 昇太 東京医科大学, 医学部, 助教 (30634935)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 骨髄腫 / 小胞体ストレス / オートファジー / マクロライド / 微小環境 / ボルテゾミブ / プロテアソーム / クラリスロマイシン |
研究実績の概要 |
近年、骨髄間質細胞(微小環境)と骨髄腫細胞との相互作用が骨髄腫細胞の増殖・生存を促進し、抗がん剤への抵抗性を生じることが報告されている。そこで、骨髄微小環境の分子病態の解明を目指し、骨髄間質細胞株LP101およびAA101(日本大学 相澤信教授より供与)と骨髄腫細胞株の共培養実験系を行った。
間質細胞株の単層上にGFP標識骨髄腫細胞株(RPMI8226, IM-9)を接着共培養し、骨髄腫治療薬であるプロテアソーム阻害剤ボルテゾミブ(BZ)添加後に骨髄腫細胞の生細胞数をフローサイトメーターにより測定すると、単培養系に比べてBZの殺細胞効果の減弱が観察された。また、セルカルチャーインサート(微細孔)を挟んで両細胞を接着共培養し、BZ添加後の骨髄腫細胞株を回収して解析すると、単独培養系に比較して小胞体(ER)ストレス性転写因子であるATF3, CHOP, GADD34やERストレス経路の下流に存在するアポトーシス促進タンパクNOXAの減弱が認められた。
これまで研究代表者らは、クラリスロマイシン(CAM)などのマクロライド抗生剤がオートファジーの阻害作用を持つという報告をもとに、BZによって誘導されるオートファジーをCAMによって阻害することで、骨髄腫細胞株に小胞体ストレス負荷の増大を伴った細胞死を増強することを報告してきた(Moriya S. Int JOncol. 2013,2015)。そこで、共培養系において、BZとCAMの併用投与を試みたところ一連のERストレスマーカーやNOXAの増大を伴った殺細胞作用の増強が認めらた。 以上の結果より、微小環境によるBZ抵抗性の原因の一つにERストレス並びにNOXAの発現低下が考えられ、この克服にCAMを併用した細胞内タンパク分解系の同時阻害が有用であることが示唆された。現在、微小環境が骨髄腫細胞のERストレス負荷を減弱させる機序についてさらなる解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微小環境における骨髄腫治療抵抗性の解明と、その克服に重点を置いて研究を行ってきたが、その原因の一つにERストレス負荷減弱が関与していると示唆される結果を得ることが出来た。また、これまでに研究代表者らが進めてきたBZとCAMの併用による投薬法の有用性が骨髄腫株と間質細胞株の共培養実験においても確認された。
現在、ERストレス経路と相関性の高いオートファジー経路についても解析を進めている。骨髄腫細胞株および間質細胞株において、オートファジーを経時的にモニタリングするシステムの構築も整いつつある。また、CRISPER/Cas9法によるオートファジーの欠損株の樹立にも成功しており、この両者を組み合わせることで今後の研究の加速が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き骨髄微小環境の分子病態の解明を目指した研究を進める。 また研究代表者は、この共培養実験系において間質細胞側でオートファジーが誘導されているという独自の結果を得ており、微小環境による薬剤抵抗とオートファジー、小胞体ストレス経路の相関性が示唆されている。そのため、これらに対して骨髄腫側、間質細胞側の両面で解析を進める。
また、今後の臨床応用を踏まえて、ゼブラフィッシュ、マウスを用いたin vivo試験も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の世界的な流行により、厳密な温度管理を要求される輸入試薬・抗体類の納品が不明確な状態となった。 税関などで輸入が停滞してしまった場合、変質や活性の低下が懸念されるため、これらの注文を一時的に停止し、残金を次年度使用額として繰り越すことにした。 残金は次年度の物品費として適切に使用する計画である。
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