研究課題
骨髄間質細胞(微小環境)と骨髄腫細胞との相互作用が骨髄腫細胞の増殖・生存を促進し、抗がん剤への抵抗性を生じることが報告されている。そこで、骨髄微小環境の分子病態の解明を目指し、骨髄間質細胞株と骨髄腫細胞株の共培養実験系を行った。前年度までの研究において、骨髄微小環境によるボルテゾミブ(BZ)抵抗性の原因の一つに小胞体(ER)ストレス並びにアポトーシス促進タンパク質NOXAの発現低下が示唆されていた。一方、研究代表者が見出したBZとオートファジー阻害作用を持つクラリスロマイシン(CAM)の併用は、骨髄微小環境下においても、骨髄腫の殺細胞作用を増強することが示唆されていた。この結果を踏まえ、NOXAのターンオーバーについて中心的に研究を進めた。シクロヘキシミドによって新規タンパク質合成を阻害するチェイス実験により、NOXAの半減期を解析したところ、コントロール処理および各薬剤単独では、NOXAは6時間以内に減衰する傾向が見られたが、BZとCAMの併用ではNOXAの減衰速度の延長が認められた。また、内在性のプロモーター制御を受けないCMVプロモーターで制御されるFlag-NOXAを用いて検討したところ、Flag-NOXAのタンパク量は、コントロール群および各薬剤単独では低く保たれていたが、BZとCAMの併用で顕著に増強することが認められた。以上の結果より、NOXAはプロテアソーム系およびオートファジー系の両方の分解制御を受けているものと思われ、この減衰速度の延長およびNOXAを介した殺細胞増強作用にはCAMのオートファジー阻害作用が関与していると示唆された。
2: おおむね順調に進展している
骨髄腫の新規治療法の開発という側面では、研究代表者らが進めてきたBZとCAMの併用による投薬法の有用性が示唆されている。また、分子機序においても、当初より着目してきたオートファジーが深く関与していると思われる結果を得ている。
引き続き骨髄微小環境の分子病態の解明ならびに、骨髄腫の新規治療法の開発を目指した研究を進める。間質細胞側への影響や、in vivo試験などが課題として残されており、網羅的遺伝子解析や骨髄腫モデルマウスを用いた動物実験の実施を検討している。
COVID-19による緊急事態宣言により、輸入試薬・抗体の納期が不明確となったため、これらの購入を保留した。残金は2021年度の直接経費と合算して試薬消耗品費として適切に使用する。
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