骨髄間質細胞と骨髄腫細胞との相互作用(微小環境)が骨髄腫細胞の増殖・生存を促進し、薬物治療への抵抗性を生じることが報告されている。そこで、骨髄腫微小環境の分子病態の解明を目指し、骨髄間質細胞株と骨髄腫細胞株の共培養実験系をモデルに研究を行った。 前年度までの研究においてプロテアソーム阻害剤ボルテゾミブ(BZ)とオートファジー阻害作用を持つクラリスロマイシン(CAM)の併用は間質細胞存在下でも骨髄腫細胞株に強力な殺細胞作用を誘導した。また、この殺細胞増強効果には小胞体ストレス(ER)負荷増大ならびに、ERストレスによって転写制御されるアポトーシス促進タンパク質NOXAの増大が関与していた。骨髄腫細胞株と間質細胞株を共培養し、BZを投与後、両細胞を分画して解析すると、骨髄腫単独培養ではBZにより骨髄腫細胞株に強力な活性酸素種(ROS)の誘導が認められ、細胞死との相関性が認められた。しかしながら、間質細胞株との共培養はBZによる骨髄腫細胞株へのROSの誘導阻害を伴って細胞死を抑制した。しかしながら、BZとCAMの併用添加は間質細胞の存在下でも骨髄腫細胞株にROSを誘導し、ERストレス性転写因子やNOXAの増大を伴って、骨髄腫に強力な殺細胞作用を誘導した。 また、ROSのscavengerであるNACの添加は、BZによるERストレスやNOXAの誘導を殺細胞作用を大きく減弱させ、細胞死を緩和させた。 以上より、間質細胞による骨髄腫の薬剤抵抗の原因の一つに両細胞の相互作用による骨髄腫のROSおよびERストレス減弱作用が考えられる。 引き続きこの現象の根幹に関与する両細胞間のネットワークの解明を進める予定である。
|