研究課題/領域番号 |
19K07112
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
泉 安彦 神戸薬科大学, 薬学部, 講師 (60456837)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 細胞移植 / パーキンソン病 / ドパミンニューロン |
研究実績の概要 |
幹細胞由来ドパミンニューロンの線条体への移植はパーキンソン病の有望な治療戦略として期待される。我々はドパミンニューロンによる線条体神経支配に細胞接着因子であるインテグリンα5β1が関与することを明らかにした(Sci Rep. 2017;7:42111)。そこで、インテグリンα5過剰発現ドパミンニューロンを線条体に移植すると効率よく神経回路に組み込まれると考えられる。これまでに、ドパミンニューロンに分化した後にインテグリンα5が発現するように、インテグリンα5(ITGA5)遺伝子をdopamine transporter (DAT)遺伝子にヘテロノックインしたマウス胚性幹(ES)細胞の作製に成功した。これまでの研究から、インテグリンα5をES細胞に過剰発現させると神経細胞への分化効率が低下することが示されているが、本ノックイン細胞では神経分化効率に影響を与えないことが明らかになった。また、種々の分化誘導因子を組み合わせることで、ドパミンニューロンへの分化効率を向上させることに成功した。このノックインES細胞をドパミンニューロンに分化させたところ、一部のドパミンニューロンで導入遺伝子の発現が確認された。さらに、パーキンソン病モデルマウスの線条体に移植したところ、導入遺伝子が発現したドパミンニューロンの生着を確認した。しかし、その数はごく僅かで、パーキンソン病様症状の改善には繋がらなかった。導入遺伝子の発現率および移植細胞の生着率を向上させる分化誘導方法・移植術について、検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに作製したノックインES細胞が、インテグリンα5を過剰発現したドパミンニューロンを作成する有用なツールであることが明らかになった。しかし、移植に用いて症状改善に繋げるのは、分化誘導方法および移植術の改善が必要であることが判明した。そのため、当初予定していた行動観察のための移植実験を中断して、移植条件の検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
導入遺伝子はドパミンニューロンへの成熟が進むと発現が上昇すると考えられる。実際、移植前の導入遺伝子の発現率は低いものの、移植した脳内では高確率で発現していた。そこで、導入遺伝子の発現率より移植細胞の生着率の向上を優先して検討する。今回、ドパミンニューロンへの分化に用いた無血清凝集浮遊培養法(SFEBq)法は、フィーダー細胞を用いないため余計な細胞の混入が防げる。しかし、胚葉体と呼ばれる細胞の凝集体の内部は密度が非常に高く細胞障害が起こっている。このために、移植後の生存率が低下するものと考えられる。そこで、分化効率に影響のない範囲で胚葉体を分散し、移植後も健全な細胞を得るための条件を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力施設での移植実験での解決すべき問題点が存在することが判明したため、当初予定していた研究代表者の研究施設での移植実験に遅れが生じた。これにより、移植実験に必要な脳固定装置などの購入を次年度に繰り越した。次年度は、研究代表者の施設において移植実験を行うため、予定通り購入する。
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