研究課題
幹細胞由来ドパミ神経の線条体への移植はパーキンソン病の有望な治療戦略として期待される。これまでの研究から、細胞接着分子インテグリンα5を過剰発現させたドパミン神経を線条体に移植すると治療効果が向上すると考えられる。前々年度に、ドパミン神経に分化した後にインテグリンα5が発現するように、インテグリンα5(ITGA5)遺伝子をdopamine transporter (DAT)遺伝子にヘテロノックインしたマウス胚性幹(ES)細胞を作製した。前年度、分化誘導法として開発した無血清凝集浮遊培養法(SFEBq)法では、移植に必要な細胞数を調製することが困難であった。本年度は、SFEBq法を改良し、移植可能な分化細胞を得ることを目的とした。前年度、ES細胞から胚様体を形成するのに使用した低吸着V底96wellプレートでは多数の胚様体を調製できない。そこで、特殊な微細加工培養容器を用いることでサイズ均一な胚様体を効率よく形成させ、安定的に培養することができた。また、前年度、分化に用いたD-MEM/Ham's F-12培地では分化細胞の生存率が悪く、G-MEM培地に変更することで改善することが判明した。さらに、移植の際に胚様体から単細胞を得る場合に備えて、細胞の剥離条件を検討した。ヒト幹細胞での報告は汎用させているAccutaseとRhoキナーゼ阻害薬の併用はマウスES細胞では悪影響を及ぼし、Accutaseの単独使用が細胞にダメージが最も少ないことが分かった。以上のように、SFEBq法を改良しマウスES細胞からの移植可能なドパミン神経への分化成功率を上げることができた。しかし、理由は不明であるが、インテグリンα5をノックインしたES細胞では、ノックインしていないものと比べ、成功率が低く、さらなる調整が必要であることが分かった。
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