研究課題/領域番号 |
19K07120
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
出山 諭司 金沢大学, 薬学系, 助教 (30634993)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | レゾルビン / ω-3系不飽和脂肪酸 / 抗うつ薬 / うつ病 / 内側前頭前野 |
研究実績の概要 |
本研究では、脳への効率的かつ非侵襲的な薬物送達法として経鼻投与法を用いて、ドコサヘキサエン酸およびエイコサペンタエン酸の活性代謝物であるレゾルビン類の治療抵抗性うつ病に対する治療効果とその作用機序を明らかにすることを目的とする。 本年度は、リポポリサッカライド(LPS)誘発うつ病モデルマウスを用いて、エイコサペンタエン酸由来のレゾルビンE1(RvE1)経鼻投与の抗うつ作用とその機序について検討を行った。その結果、RvE1 10 ngの経鼻投与が抗うつ作用を示すことを見出した。RvE1経鼻投与の抗うつ作用は、AMPA受容体拮抗薬NBQXおよび電位依存性L型カルシウムチャネル阻害薬ベラパミルの全身投与により抑制されることが明らかとなった。また、RvE1経鼻投与の抗うつ作用は、内側前頭前野への脳由来神経栄養因子(BDNF)中和抗体、血管内皮増殖因子(VEGF)中和抗体またはmechanistic target of rapamycin complex 1(mTORC1)阻害薬ラパマイシンの局所投与により抑制されることを見出した。以上の結果より、内側前頭前野での活動依存的なBDNFおよびVEGFの遊離と、これらの下流におけるmTORC1活性化が、RvE1経鼻投与の抗うつ作用に関与することが示唆された。内側前頭前野内BDNFおよびVEGF遊離とmTORC1活性化は、治療抵抗性うつ病患者に即効性かつ持続性の抗うつ作用を示すことが知られているNMDA受容体拮抗薬ケタミンの抗うつ作用にも関与することから、RvE1経鼻投与も治療抵抗性うつ病患者に有効性を示す可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初使用予定であったACTH反復投与モデルは、レゾルビン類の抗うつ作用の検討に適していないことが判明したため、うつ病モデルをLPS誘発うつ病モデルに変更して検討を進めたが、当初想定していた通りの作用機序で、RvE1経鼻投与が抗うつ作用を示すことを明らかにすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の結果から、RvE1経鼻投与の抗うつ作用に内側前頭前野が重要であることが明らかとなったことから、内側前頭前野に焦点を当てて、RvE1経鼻投与の抗うつ作用機序をより詳細に検討していく。また、レゾルビンE2(RvE2)の安定等価体を入手できたことから、この抗うつ作用の有無を調べ、抗うつ作用が認められれば作用機序について検討する。さらに、別のうつ病モデルマウス(学習性無力モデル、卵巣摘出モデルなど)を作製し、RvE1やRvE2安定等価体が複数のうつ病モデルマウスにおいて抗うつ作用を示すかを調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で参加予定だった学会が紙上開催(web開催)または延期となったこと、並びに、ACTH反復投与モデルからLPSモデルへの変更に伴い、ACTH購入費が途中で不要になったことにより、未使用額が生じた。 次年度は、複数のうつ病モデルを用いた複合的な解析を進めることとし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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