研究課題
本研究では、新規に開発された非ペプチドで低分子のPACAP受容体アンタゴニストが、不安やうつ病などのストレス性精神疾患の新たな治療薬になりうる可能性を行動薬理学的手法などを用いて検討し、精神行動の改善効果が認められた場合には、その改善作用につながる脳領域や関わる分子を探求することで、精神的なストレスが病態を引き起こす発症メカニズムの手掛かりを見出すことを目指す。令和3年度は、以下の研究成果を得た。1)慢性的な精神的ストレスを負荷したマウス(慢性社会的敗北ストレスマウス、または、慢性的コルチコステロン投与マウス)を用いて、PACAP受容体アンタゴニストの行動薬理学的検討を行った。その結果、雌性マウスにおいても、PACAP受容体アンタゴニストの抗うつ効果、抗不安効果が認められること、また、腹腔内投与のみならず経口投与においても、抗うつ効果、抗不安効果が認められることが明らかになった。2) 慢性的な精神的ストレスを負荷したマウス(慢性的社会的敗北ストレスマウス)を用いて、vehicle群とPACAP受容体アンタゴニスト投与群に分け、RNA-sequenceを実施した。その結果、fold change2倍以上の変動が認められたものが116遺伝子、fold change-2倍以上が214遺伝子あることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
非ペプチドで低分子のPACAP受容体アンタゴニストの薬理作用について、当初の予定通り行動薬理学的検討を終了し、その作用に関わる領域の解析、RNA-seq解析まで実施できた。
ストレスに関わる脳領域においてPACAP-Creマウスを用いて、神経活動操作を試みることで、PACAPシグナル依存的にストレス応答に関わる重要な領域、投射経路を検討する。また、RNA-sequenceにより変動が認められた遺伝子において、PACAP受容体との共局在や細胞種を同定する。
21年度のRNA-sequenceの解析費用や大阪大学共同研における顕微鏡使用料などが、22年度に引き落とされるため。前述の経費や、マウスの購入に使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件)
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