心筋の肥大化には、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)を介したシグナルの活性化が強く関与しており、その活性化は、GPCRに共役するGタンパク質ファミリーのG13またはGqによって担われる。この心肥大は心臓への圧負荷がなくなると退縮するが、その退縮メカニズムは全く不明である。近年、DREADD(Designer Receptors Exclusively Activated by Designer Drugs)システムという、Gタンパク質を介したシグナルのON/OFFを自在に制御できるシステムが開発された。このDREADDシステムを心筋細胞に適用し、G13やGqの活性化のON/OFFを制御すれば、心肥大(活性状態)と心肥大退縮(不活性状態)を自在に作り出すことができると考えた。そこで、DREADDシステムを活用することで、心肥大の退縮を担う分子を探索し、その分子メカニズムの解明を目指した。 本年度は、昨年度に引き続き心肥大や心肥大をコントロールするための人工受容体の作成を試みた。具体的にはGq特異的なデザイナーGPCRの細胞内第2第3ループを他のGPCR由来の物に置換したり、C末端領域を置換することで数十種類のキメラ受容体の作製を行った。その後、ルシフェラーゼアッセイやNanoBiTアッセイなどを行い、作製したキメラ受容体のGタンパク質との特異性を確認した。しかしながら、目的Gタンパク質を特異的に活性化できるデザイナー受容体の作製には至っていない。
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