研究課題/領域番号 |
19K07123
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
関 貴弘 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 准教授 (50335650)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 脊髄小脳失調症 / シャペロン介在性オートファジー |
研究実績の概要 |
脊髄小脳失調症(SCA)は常染色体優性遺伝性の神経変性疾患であり、進行性の小脳萎縮と小脳性運動失調を症状とする。原因遺伝子の違いによりSCA1-48まで分類されているが、これら原因タンパク質の共通の機能は見出されていない。しかし、共通の症状が観察されることから、様々なSCA原因タンパク質は共通の機序によりSCA発症を引き起こすと想定される。これまでに、いくつかのSCA原因タンパク質を発現させた細胞で、オートファジー・リソソーム系タンパク質分解の一つの経路であるシャペロン介在性オートファジー(CMA)の活性が低下することを明らかにしてきた。このCMAの重要性を確認するため、アデノ随伴ウイルスベクターによるmiRNA遺伝子導入により、小脳神経選択的にCMA関連タンパク質LAMP2Aをノックダウンし、CMA活性を低下したマウスを作製し、その解析を行った。このマウスはSCAモデルマウスと同様に、進行性の運動障害を示すことが明らかとなった。小脳の組織解析を行ったところ、症状が観察されてしばらく経過したマウスでは、小脳神経の脱落やグリア細胞の活性化が観察された。一方で、運動障害が観察され始めの段階では、小脳神経の脱落は観察されない一方で、ミクログリアやアストロサイトの活性化は誘導されていた。神経変性より先行してグリア細胞の活性化が観察される現象はSCAモデルマウスでも共通して観察されることから、小脳神経細胞におけるSCAの活性低下がSCA発症の分子機序の一端を担っているとことが本研究結果から強く示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究成果は、本来の研究計画とは少し異なるアプローチで行った研究ではあるが、研究目的である様々な脊髄小脳失調症に共通な治療薬の探索に繋がる、共通の発症機序の一端の解明に繋がる研究成果が得られたため、研究は順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度にin vitro SCAモデルで治療効果を示すことが解明したD-cysteineについて、in vivo SCAモデルでの治療効果を検証していくと共に、本年度明らかとなったCMA活性に対するD-cysteineの影響も検討し、その治療効果の分子機序解明にも繋げていく予定である。
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