研究課題
1年目の研究で脊髄小脳失調症(SCA)を引き起こす原因タンパク質を初代培養小脳プルキンエ細胞に発現させると共通にプルキンエ細胞の樹状突起の発達を低下させること、その樹状突起発達低下を小脳選択的に硫化水素を産生させるD-cysteineが改善することを見出した。そこで、本年度はこのD-cysteineの慢性投与がSCAモデルマウスに対しても有効かどうかの検討を行った。アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いて小脳神経細胞にSCA1型(SCA1)原因タンパク質を発現させると、投与8週目以降に進行性の運動障害が誘導された。このSCA1モデルマウスに対し、運動障害が発症するより前のAAVベクター投与6週目からD-cysteine(100mg/kg)の連日投与を行い、運動障害発症に及ぼす影響を検討した。D-Cysteineの慢性投与は運動障害発症を有意に遅らせる効果を示した。さらに、D-cysteineの効果を組織学的に解析したところ、SCA1モデルマウスで観察される小脳プルキンエ細胞の変性や早期のグリア細胞活性化がDcysteine慢性投与で抑制されることを明らかにした。1年目の結果から、D-cysteineは数種類のin vitro SCAモデルに対し表現型を軽減したことに加え、本年度の結果からD-cysteineはin vivo SCAモデルに対して発症予防効果を示すこと明らかとなった。以上を総合的に考えると、D-cysteineは様々な原因遺伝子で発症するSCAに共通の発症予防薬となる可能性が強く示唆される。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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