研究課題/領域番号 |
19K07125
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
山村 寿男 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 教授 (80398362)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肺高血圧症 / イオンチャネル / カルシウム / 肺動脈 / 平滑筋 / TMEM16A / 収縮 / リモデリング |
研究実績の概要 |
肺動脈性肺高血圧症は、肺血管の過収縮(攣縮)や肥厚(リモデリング)により、持続的に肺動脈圧が上昇する致死性の難病である。肺動脈性肺高血圧症の発症原因は解明されていないが、その病態形成には細胞内カルシウムイオン濃度の過度の上昇が関与することが知られている。近年、肺血管拡張作用を期待した選択的肺動脈性肺高血圧症治療薬が導入されたが、依然として十分な薬物治療が確立されたとは言い難い。そのため、新規作用機序を有する肺動脈性肺高血圧症治療薬の開発が切望されている。本申請課題では、肺動脈性肺高血圧症で特異的に発現変動するカルシウム関連イオンチャネルを同定し、機能解析し、肺動脈性肺高血圧症の発症および病態形成メカニズムを解明することを目指している。本年度は、カルシウム活性化クロライドチャネルを構成するTMEM16A分子に着目した。その結果、ヒト肺動脈平滑筋細胞には、TMEM16ファミリー(TMEM16A~K、ただしIは除く)の10種類の遺伝子のうち、TMEM16A、TMEM16F、TMEM16Kの高発現が認められた。ヒト肺動脈平滑筋細胞において、カルシウム活性化クロライド電流が観察された。また、特発性肺動脈性肺高血圧症患者由来の肺動脈平滑筋細胞では、TMEM16Aの発現量および電流活性が対照群と比較して減少していた。本研究で明らかになった特発性肺動脈性肺高血圧症患者由来の肺動脈平滑筋細胞におけるTMEM16Aの発現変化は、肺動脈性肺高血圧症の病態機構の解明や標的創薬につながると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、肺動脈性肺高血圧症の病態形成機構に関連する分子として、カルシウム活性化クロライドチャネルを構成するTMEM16Aを同定することができた。さらに、TMEM16Aの肺血管生理機能と、肺動脈性肺高血圧症における病態生理学的役割を解明した。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、肺動脈性肺高血圧症で特異的に発現変動するカルシウム関連イオンチャネルをさらに同定し、機能解析し、肺動脈性肺高血圧症の発症および病態形成メカニズムを解明することを目指す。また、同定したカルシウム関連イオンチャネルを分子標的とした新規肺高血圧症治療薬の開発(イオンチャネル創薬)を進める。
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