研究課題
腸管リンパ管(乳糜管)は脂肪吸収という重要な役割を果たしている。昨年に引き続き本研究では乳糜管を介した脂肪吸収に果たすCGRP/RAMP1の役割とその制御機構を解明し、腸管リンパ管の可塑性制御が肥満や代謝疾患治療につながるかを明らかにするため検討を行った。RAMP1 KO、野生型(WT)に高脂肪食または普通食を8週間給餌し比較検討したところ、高脂肪食を摂取したRAMP1 KOではWTに比べ、体重増加、脂肪量(血中、内臓)増加、高コレステロール血症、高血糖となっていること、免疫染色では乳糜管の長さが短く、幅が広くなる傾向が認められた。また、高脂肪食を摂取したRAMP1 KOではリンパ管内皮マーカーやリンパ管新生因子の発現が減少していた。一方、腸管絨毛内ではWT、RAMP1 KOいずれにおいてもCGRP陽性神経線維が乳糜管および平滑筋周囲に豊富に分布することを確認した。蛍光標識した長鎖脂肪酸(BODIPY FL C16)経口投与による乳糜管脂肪吸収機能を調べると、興味深いことに血液中の蛍光脂肪色素強度は高脂肪食を摂取したRAMP1 KOだけがより高く、多くの長鎖脂肪酸を取り込むことが分かった。一方、乳糜管表面にあるButton構造およびZipper構造を解析する目的で乳糜管をLYVE-1、Button/Zipper構造をVE-cadherinで染色し共焦点顕微鏡を用いて免疫組織学的解析を試みたところ、乳糜管表面構造(Button/Zipper構造)はButton構造とZipper構造が混在しており、これらのバランスにより脂肪吸収を調節していることが推察された。以上の結果から、高脂肪食負荷によってみられる乳糜管構造および機能変化にはCGRP/RAMP1シグナルの関与が示唆された。
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