ヒト不全心筋では、ユビキチン化タンパク質の過剰な蓄積が認められることから、心不全増悪時に高発現もしくは活性化されるユビキチンリガーゼ(E3リガーゼ)が存在するという考えのもと、E3リガーゼの探索ならびに心機能に及ぼす影響を検討した。我々は、心不全増悪時にユビキチン化が増加しているタンパク質の一つとして心筋小胞体カルシウムポンプ(SERCA2a)の制御因子であるホスホランバン(PLN)を既に明らかにしているが、今回、心臓に存在しているE3リガーゼ「Parkin」が心不全増悪時にPLNのユビキチン化に寄与していることを見出した。すなわち、心不全モデルマウス(NHE1-トランスジェニック(Tg)マウス、およびTgPLNR9Cマウス)の心臓ではParkinとPLNの結合が顕著に増加していることが観察された。また、Parkinと協調して働くことが知られているリン酸化酵素であるPINK1とPLN の結合も顕著に増加していることが観察された。ParkinがPLNの分解系に関与しているかをさらに調べるために、PLN発現HEK293細胞のParkin遺伝子を欠損(ノックダウン)させたところ、PLNの発現が増加した。逆に、Parkin遺伝子を高発現させたところ、PLNの発現が減少した。 以上の結果より、心収縮能調節因子であるPLNをユビキチン化しているE3リガーゼの一つとして、新たにParkinの寄与を示すことができ、PLN分解系の一端を担っていることが明らかになった。心不全病態の改善や治療法の開発を目指す上で、Parkinを標的とした新たな治療戦略を構築できる可能性を示した。
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