研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、未知の二次代謝産物生合成遺伝子クラスターに存在する潜在的標的分子を指標としたゲノムマイニングによる、効率的な化合物の獲得である。それと同時に、遺伝子クラスター中に存在する標的分子と考えられる遺伝子が、どのような活性を示すのかを明らかにすべく研究を行っている。本年度においては、研究の進捗状況から昨年度につづき、後者の研究についてすすめることにした。具体的には、糸状菌Cladobotryumsp.から単離されたFR901483の生合成研究ならびにその遺伝子クラスターに存在する標的分子について、その活性を明らかにした。化合物FR901483の生合成経路については、昨年度に全ゲノム解析から推定される生合成遺伝子クラスター(frzクラスター)を見出していた。本年度は、clfクラスターに存在する生合成に関与すると考えられる遺伝子の機能を明らかにするために、それぞれクローニングし、異種発現宿主によく用いられるAspergillus nidulansに導入した。推定されるリン酸気転移酵素を除くすべての遺伝子群を導入した株の培地抽出物をLCMS解析に供したところ、FR901483の脱リン酸体の生産を確認することに成功した。また、リン酸基転移酵素を導入したところ、生産量が劇的に減少したが、クラスター中に存在するホスホリボシル二リン酸アミドトランスフェラーゼ (PPAT, FrzK) を導入することで、この減少を回避できた。このことから、FrzKはFR901483の耐性に関わる酵素であることが推定され、潜在的な標的分子であることが示唆された。今回、FR901483の生合成の再構築に成功したが、この結果は学術論文にまとめた(J. Am. Chem. Soc. 2021, 143, 132-136)。
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