研究実績の概要 |
本研究課題において、今年度、Cladobotryum属真菌のFR901483という化合物の遺伝子クラスター中に存在する標的分子と考えられる遺伝子の機能を明らかにすべく実験を行った。昨年度、FR901483の生合成遺伝子クラスターを同定し、その生合成経路を明らかにすることができたが(JACS, 2021, 143, 132-136)、その際に見いだされたclf2が本化合物の生産菌における耐性遺伝子であることが示唆されていた。耐性遺伝子とは、生物活性化合物の生産菌が自身の身を守るため有している遺伝子である。これは生産菌のもつ自己防衛機構の一つである。Clf2は核酸の生合成におけるamidophosphoribosyltransferase (PPAT) ホモログであり、本化合物の標的分子は、PPATであると同時に、Clf2はPPATとして活性を維持しつつ、本化合物の阻害活性を受けないと推測された。そこでこれらを明らかにするために、まず大腸菌由来のPPATおよびClf2タンパク質を精製し、活性を測定した。その結果、予想通りClf2はPPAT活性を有していること、大腸菌由来PPATがFR901483に感受性を持つ一方でClf2は非感受性であることが明らかになった。次に、Clf2がどのようにFR901483に対して非感受性になるか、そのメカニズムを明らかにすべく研究を進めた。それぞれのタンパク質のアライメントおよびタンパク質-FR901483の共結晶構造から、阻害活性を忌避する要因となるアミノ酸残基の特定に成功した。現在それら得られた結果について、論文執筆中である。
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