研究課題/領域番号 |
19K07140
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
浜本 洋 帝京大学, 医真菌研究センター, 准教授 (90361609)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 化学療法薬 / 感染症 / ケミカルバイオロジー / 生化学 |
研究実績の概要 |
本研究において、メナキノンを標的とし膜障害性及び殺菌活性を示すライソシンEの宿主因子による抗菌活性の上昇について、そのメカニズム解析を行った。その結果、黄色ブドウ球菌の培養液に血清中のライソシンEの抗菌活性を上昇させる宿主因子を加えた条件で、抗菌活性を示すよりも低い濃度(Sub-MIC)のライソシンEに曝露させると、DNAの細胞外への流出で検出した膜障害活性が大きくなり、また、生菌数も低下することがわかった。ライソシンEは、この宿主因子がなくても黄色ブドウ球菌を殺傷させないが、膜電位を消失させる程度の膜障害を引き起こす。我々が同定したいライソシンEの抗菌活性を上昇させる血清中の宿主因子は、そのSub-MICで引き起こされるライソシンEの軽微な膜障害を拡大させ、大規模な膜障害を引き起こし、殺菌を促進していると考えられる。また、これまでにライソシンEと細胞壁合成の中間体lipid IIが相互作用することがわかっていた。しかしながら、我々の研究からlipid IIを含有するリポソーム膜に対して、ライソシンEは膜破壊活性を示さないなど、そのライソシンEの活性における役割については不明であった。我々は、lipid IIを培地に加えると、宿主因子によるライソシンEの抗菌活性の上昇が消失することを見出した。そこで、lipid IIと宿主因子、ライソシンEとの相互作用について検討したところ、宿主因子とライソシンEとの結合量が、lipid II依存に増加することを見出した。一歩、宿主因子による抗菌活性の上昇を受けにくいライソシンEの誘導体は、lipid IIによる宿主因子とライソシンEの相互作用が天然型ほど上昇しないことを明らかにした。さらに、lipid II結合性の抗生物質が同様の機構で、宿主因子と相互作用し、抗菌活性が上昇することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1年目から2年目にかけて計画していたライソシンEの宿主因子による抗菌活性の向上のメカニズム解析が1年目に完了したこと、及び、1年目に計画していた宿主因子によって活性化する抗生物質の性質が明らかになった。従って、計画よりも早く研究が進行していることから、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1) ライソシンEの宿主因子による抗菌活性の上昇メカニズムの解析:これまでに解析してきた結果から、ライソシンEの宿主因子による抗菌活性の亢進は、黄色ブドウ球菌側の応答ではなく、物理的な現象であると考えられる。一方、lipid IIの必要性については、lipid IIが黄色ブドウ球菌の生存に必須な遺伝子であり、またlipid IIだけを減少した株の確立が困難であったことから、現時点での技術では解析が困難であることがわかった。そこでlipid IIの量だけが変動する生理的な条件を見出し、ライソシンEの殺菌活性、及び膜障害活性に対する影響を検討する。また、ライソシンEの抗菌活性を上昇させる宿主因子はこれまで本研究で扱ってきたものだけでなく、別の因子の関与が考えられる結果が得られている。そこで、本因子について同定し、その活性化メカニズムが本研究で明らかにしたものと同様なものであるか本研究計画において追加で検討する。 (2) 宿主因子によって活性化される抗生物質の同定:これまでの研究から、既に複数の抗生物質が同定した宿主因子によって抗菌活性が上昇することを見出している。2年目において、さらに多数の抗菌・抗真菌物質について宿主因子による活性化の有無を確認する。さらに、計画通りに宿主因子によって活性が上昇する土壌細菌の培養上清を見出すことが可能であるか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度実施した実験に必要な大部分の消耗品を、これまでに購入していた既存の在庫、及び、研究室の基盤的研究費で賄えたため。繰り越した研究費は、今年度実施するスクリーニングを効率的に実施するための人件費に充てる予定である。
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