本研究は、黄色ブドウ球菌が産生するStaphylococcal superantigen-like proteins (SSLs)やマスト細胞に発現するアクチン結合タンパク質Coronin-1に焦点を当て、アレルギー応答におけるマスト細胞の機能制御機構の解明を目指している。 これまでの研究より、SSL11処理したマウス骨髄由来マスト細胞(BMMC)では抗原抗体複合体刺激による脱顆粒応答が減弱していることや、IgEではなくマスト細胞(BMMC、MC/9、RBL-2H3)にSSL11が結合することなどを明らかにしている。そこでマスト細胞におけるSSL11の結合分子の探索を行った。BMMCの溶解液を調製し、SSL11によるプルダウンアッセイを行い、単離されたタンパク質をnanoLC-MALDI-TOF-MSにより解析したところ、Mac-2-binding protein(Galectin-3-binding protein)であることが明らかになった。 一方で、抗原抗体複合体刺激によるマスト細胞の活性化に伴いCoronin-1の412番目のセリン残基(Ser-412)がプロテインキナーゼCα(PKCα)によってリン酸化されることを明らかにしている。マスト細胞のPKCαを阻害することで脱顆粒応答は抑えられるが、PKCαの基質となるタンパク質は多く存在し、Coronin-1のリン酸化とマスト細胞機能の関係性については未だ不明である。そこで、Coronin-1をノックアウトまたはノックダウンしたマスト細胞への野生型またはリン酸化部位変異体(S412A)Coronin-1のレスキューを試みた。遺伝子導入したCoronin-1の発現量を揃えることが困難であったため、CRISPR/Cas9システムを利用したゲノム編集によりリン酸化部位変異体Coronin-1発現マスト細胞の樹立を行っている。
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