研究課題/領域番号 |
19K07145
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研究機関 | 長崎国際大学 |
研究代表者 |
宇都 拓洋 長崎国際大学, 薬学部, 准教授 (90469396)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ケミカルジェネティクス / 出芽酵母 / 生薬エキス / 作用機序 / 相互作用 / 標的分子 / 甘草 / 黄連 |
研究実績の概要 |
約4000株の遺伝子破壊出芽酵母株におけるカンゾウエキス高感受性株の網羅的解析はすでに実施済みである。カンゾウエキスにより増殖が著しく抑制される高感受性株の遺伝子の機能とタンパク質の細胞内局在の解析の結果、カンゾウエキスは代表的な既知の薬剤とは違う経路に作用しており、標的とする遺伝子の機能は多岐にわたり、かつ特異的な細胞内局在はないことが示唆された。さらに、カンゾウエキスにより増殖が促進された遺伝子の機能に注目し解析を行ったところ、ミトコンドリアに関与する遺伝子群が大きく変動していることが明らかとなった。さらにカンゾウの活性画分を同定したところ、フラボノイドを主とする画分にもっとも高い増殖促進活性を見出した。現在、活性本体の単離同定を進めている。また、カンゾウに加えて新たな生薬エキスの選抜を行った。申請者らがこれまで作用機序解析などを行った実績のあるニンジン、オウレン、オウゴン、さらにマオウなどの生薬エキスを調製し、遺伝子破壊出芽酵母株の混合プールに対するサブリーサル濃度を評価した。オウレンおよびオウゴンは、サブリーサル濃度を決定することが出来たが、ニンジンおよびマオウは予想に反して出芽酵母株の増殖を促進したためサブリーサル濃度の決定には至らなかった。したがって、次世代シーケンサーによる遺伝子群の変動パターン解析は、カンゾウ、オウレン、オウゴンにフォーカスし進めることにした。さらに、標的分子解明の手段のひとつとして生薬成分に対する特異的モノクローナル抗体を利用することを考えているため、グリチルリチン酸、ベルベリン、バイカリン/バイカレインに対する抗体の精製を行い活性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの蔓延により研究協力者や研究室所属学生のキャンパスへの入構禁止措置が行われたため、やや遅れが生じている。さらに、カンゾウに加えて新たな生薬エキスの選抜を実施したが、遺伝子破壊出芽酵母株の混合プールに対するサブリーサル濃度の決定が難しい生薬エキスがあり、それらの再評価などに時間を要した。現在、遺伝子群の変動パターン解析に向けた研究は確実に進んでいるため、これまでの遅れは次年度中に取り戻せる範囲のものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1) カンゾウ、オウレン、オウゴンエキスが遺伝子破壊株に与える影響の網羅的解析 遺伝子破壊出芽酵母株の混合プールを各エキスのサブリーサルな濃度で処理し、ゲノムDNAを抽出精製する。次世代シーケンサーによりタグカウントを行うことでエキス高感受性株を選抜する。高感受性株の遺伝子の細胞内局在部位と機能、エキス間の遺伝子変動パターンの相違や特徴を解析する。 2) 各生薬エキスの高感受性株の増殖を制御する成分の単離同定と標的分子解析 各生薬エキスの高感受性株の増殖をモニターしながら、エキスを順次分画し、活性画分の同定、さらに活性成分の単離同定を行う。単離した成分が目的のエキス高感受性株の増殖を確実に制御することを明らかにした上で、出芽酵母破壊遺伝子データベースを活用したプロファイリングにより標的分子を同定に取り組む。 3) 生薬成分に対する特異的モノクローナル抗体を用いた標的分子の同定 申請者の研究室は、生薬成分に対する特異的モノクローナル抗体をこれまで40種類以上作製しており、上述の生薬エキスの主有効成分に対する抗体は作製済みである。これらの抗体を用いた標的分子の同定も同時進行で行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述のとおり、新型コロナウイルスの蔓延のために予定していた研究協力者や研究室所属学生のキャンパスへの入構禁止措置が行われた結果、やや遅れが生じている。また遺伝子群の変動パターン解析を行う生薬エキスの絞り込みにも時間を要した。そのため、次のステップの次世代シークエンサーを用いた解析はこれからであり、次年度使用額はこれらの解析に関わるものである。
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