研究課題
研究代表者はフォスタグに蛍光分子を標識した蛍光フォスタグを合成し,この蛍光フォスタグをゲル染色剤として応用し,ヒスチジンリン酸化タンパク質のリン酸化プロファイリングを行った。大腸菌のヒスチジンキナーゼEnvZの自己リン酸化反応をATP存在下で行った。その反応液を電気泳動で分離後,フォスタグ蛍光ゲル染色剤の1つであるPhos-tag Magentaを用いてゲル染色した。リン酸化反応の進行に伴ってEnvZのバンドの蛍光強度が増大した。また,同じ試料をフォスタグ電気泳動で分離した後,CBB染色を行った。Phos-tag Magentaを用いて染色されたバンドの蛍光強度とフォスタグ電気泳動を用いて分離したリン酸化型のEnvZの量を定量し,両者のタイムコースを比較したところ,それらはほぼ同等であることが示された。この結果から,フォスタグ電気泳動と同様に,フォスタグ蛍光ゲル染色剤を用いることで,ヒスチジンリン酸化タンパク質を簡便に定量解析できることが示された。次に,フォスタグ蛍光ゲル染色剤を用いたヒスチジンキナーゼ阻害剤プロファイリングを行った。ヒスチジンキナーゼ阻害剤プロファイリングの最初の実施例として既知のwaldiomycinを用いた。ATP存在下の反応液を電気泳動で分離後,フォスタグ蛍光ゲル染色剤の1つであるPhos-tag Cyanを用いてゲル染色した。その結果,waldiomycin濃度依存的にリン酸化の程度を示す蛍光強度は低下し,EnvZに対するIC50値が算出された。これは既に報告されている数値とほぼ同等であった。このことより,フォスタグ蛍光ゲル染色法をヒスチジンキナーゼ阻害剤のプロファイリング法として応用できることが示された。
2: おおむね順調に進展している
当該年度においては,当初の予定通り,フォスタグに蛍光分子を標識した蛍光フォスタグを合成し,この蛍光フォスタグをゲル染色剤として応用することで,フォスタグ電気泳動の解析能をポジティブコントロールとして比較しながら,バクテリアのヒスチジンキナーゼの自己リン酸化反応を評価することができた。新たに開発した蛍光ゲル染色剤は,ヒスチジンキナーゼの自己リン酸化反応だけではなく,レスポンスレギュレーターの自己リン酸化反応も定量解析できることがわかり,バクテリアの2成分伝達系の解析,すなわち,不安定なリン酸基を有すヒスチジンリン酸化タンパク質やアスパラギン酸リン酸化タンパク質の解析に応用できることを証明することができた。さらには,既知のヒスチジンキナーゼ阻害剤を用いたヒスチジンキナーゼ阻害剤プロファイリングにも応用でき,IC50値算出のために必要な定量性を確保できることも証明することができた。したがって,今後のスループット性を取り入れたアッセイ系の開発にも期待ができる。
今後はスループット性の追求を主目的とする。多検体を一度に検査できるアレイフォーマットのヒスチジンキナーゼアッセイ法を構築し,従来の電気泳動法を凌駕する創薬を指向した世界初の実用的な阻害剤プロファイリング法を創造する。例えば,PVDF 膜上でドットブロットしたサンプルを解析できるようなアッセイ法が構築できれば,それはハイスループットスクリーニング法のプロトタイプに成り得る。電気泳動では1枚のゲルで 20 検体ほどしか検査できないが,PVDF 膜にキナーゼアッセイ反応液をブロットする方法であれば,ドットブロッターを用いて 96-384 検体を一度に検査することも可能である。このようなハイスループットスクリーニングを目指したプロトタイプのアッセイ法を開発する。
旅費や謝金に予定していた予算が削減でき,次年度使用額が生じた。さらに研究が展開されるので,旅費や謝金に大いに活用させていただき,研究を効率よく進める予定である。
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