研究課題/領域番号 |
19K07148
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
櫻井 哲也 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 准教授 (90415167)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ゲノム / 遺伝子機能 |
研究実績の概要 |
今年度は、研究対象生物である渦鞭毛藻アンフィディニウム属の一種とシンビオディニウム属の一種の遺伝子概観の理解ためのゲノム情報基盤の構築を次のように行った。最初に、研究対象生物である渦鞭毛藻アンフィディニウム属の一種とシンビオディニウム属の一種の各々の藻体を入手し、光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡を用いた形態的特徴の把握とリボソームRNAをコードするゲノム領域の塩基配列決定を行い、各生物種の識別を試みた。その結果、アンフィディニウム属の一種はAmphidinium gibbosum、シンビオディニウム属の一種はSymbiodinium voratumと推定された。課題提案時に触れたように対象生物種の2種の渦鞭毛藻アンフィディニウム属とシンビオディニウム属は、核ゲノムサイズが数十億塩基と巨大であることが報告されているため、核ゲノムの全塩基配列決定ではなく、メッセンジャーRNAのコレクション及びその塩基配列決定を行う戦略をとった。各々の渦鞭毛藻について、4種類の生育環境下での静置培養を行った。これは、生育環境が異なることによる細胞内転写産物(RNA)の発現レベルを把握することを視野に入れたためである。培養に際しては、各生育環境を構築するために特定の元素を欠く海水を作成して実施した。研究対象生物種の2種の渦鞭毛藻について、上述の4種の培地で培養し、各々同条件の培養を独立して3回行った。各培養液を遠心分離することで各生育環境下の藻体を獲得し、液体窒素で速やかに凍結し、全量RNAの抽出を行った。抽出された全量RNAは、高速DNAシークエンサによる塩基配列決定に使用することに量、質ともに良好であった。各渦鞭毛藻から一つの実験区のみのRNAサンプルを対象として、塩基配列決定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
課題提案の申請時に、1年目で主たる研究対象生物のゲノム情報基盤の整備および基本的な遺伝子機能注釈による遺伝子概観の獲得を目標としたが、配列解析に用いるための十分量の塩基配列データを得ていない。各生育環境下の藻体から精製したRNAの塩基配列決定は海外に拠点を有する受託業者へアウトソースにて実施する予定であったが、昨今の香港デモ等の不安から受託解析の発注を見合わせたため。
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今後の研究の推進方策 |
遅延した各種RNAサンプルの塩基配列決定を実施し、その後は研究計画に則り、研究対象生物である渦鞭毛藻アンフィディニウムの一種とシンビオディニウムの一種の生育環境間における遺伝子発現レベルの差異の把握を行う。可能であれば、各遺伝子のタンパク質特性に関する解析を行い、注釈情報の高度化を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
塩基配列決定業務の発注先の情勢不安から発注を見合わせたことと、研究対象生物である渦鞭毛藻アンフィディニウム属とシンビオディニウム属の一種は、染色体は細胞周期を通じて常に凝集したままであり、クロマチン構造も他の多くの真核生物とは異なることが知られていることから、全量RNA精製等の実験プロセスを一部の処理区の渦鞭毛藻藻体に対してのみ実施したことが理由といえる。 実施した塩基配列決定で得られた配列データから、下流の実験プロセスでの不具合は生じないことが確認できたため、計画通りの実験を速やかに実施する。実験手順自体に変更はないため、次年度の研究計画に遅れを生じさせる可能性は非常に低いと考えられる。
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