研究課題
メガダイバーシティセンターと呼ばれる生物資源の豊富な熱帯資源国の多様な植物資源を利用することで、特異な環骨格を有する多環状含窒素骨格を有する機能性分子を探索した。特に、抗原虫活性(抗マラリア)を有する多環状含窒素化合物の探索を指向し、未利用植物資源の抽出物ライブラリーを用いて検討したところ、インドネシア産 Tabernaemontana macrocarpa に注目した。T. macrocarpa 樹皮を抽出、精製し、アルカロイド画分をLH-20、アミノシリカゲルおよびシリカゲルカラムを用いた分離を行い、2種の新規二量体モノテルペンインドールアルカロイド(bisnaecarpamine A and B)を単離した。新規アルカロイドの構造は各種二次元 NMRの解析により推定した。Bisnaecarpamine A and Bの立体配置は、スペクトル解析とTD-DFTによるCD計算を行い、理論計算値と実測値を比較することにより明らかにした。抗マラリア活性を検討したところ、分子のコンフォメーションと活性とが関係することが示唆された。一方、インドネシア産 Voacanga grandifolia のエキスも活性を示し、同様に活性成分の単離を進めたところ、2種の新規二量体モノテルペンインドールアルカロイドを単離した。構造解析により、12’-demethyl-vobtusine-5-lactam および Isovobtusine-N-oxide であることが明らかになり、共にマラリア原虫 P. falciparum 3D7 に対して抗マラリア活性を示した。他の熱帯植物資源を用いた新たな創薬素材分子の探索も継続している。
2: おおむね順調に進展している
既に数種類の熱帯植物資源を用いて、マラリアをターゲットとした新たな多環状含窒素化合物を見出している。それらの絶対立体配置を含めた詳細な構造をスペクトル分析とCD計算により明らかにした。活性化合物のコンフォメーション解析を行い、活性との関係を検討した。様々な熱帯植物ソースより各種の活性試験により興味深い抽出エキスを見出しており、活性成分の検討を開始している。
多様な植物資源からの植物抽出ライブラリーを用いて、新しい創薬シードの創製を目指す。抗原虫活性(抗マラリア)のスクリーニングにより、有望な熱帯植物を数種類見出しており、活性成分の探索を進める。さらに、既に候補化合物として見出している多環性アルカロイドは、作用機序の解析を行う。(1)保有する植物抽出エキスライブラリーのスクリーニングを行い活性分画の検討を行うとともに、継続してインドネシアの研究者より入手したエキスに対して、スクリーニングを行う。(2)抗マラリア活性を示す多量体アルカロイドの立体構造解析と作用機序を解析する。(3)新たな作用機序(DNA複製後に増殖抑制)の抗マラリア活性分子(シゾント期においてマラリア原虫の増殖を阻害)の単離を目指す。新たな活性天然物の探索スクリーニングと既に活性候補化合物として上がってきた多量体アルカロイドの構造解析、作用機序の解析を同時に検討する。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
Journal of Natural Medicines
巻: 75 ページ: 408, 414
10.1007/s11418-020-01475-w
巻: 75 ページ: -
10.1007/s11418-021-01510-4