研究実績の概要 |
トマト完熟果実の主成分としてリコピンより約4倍高い含量をもつトマトサポニンEsculeoside A(EsA)には、マウスアトピー性皮膚炎様皮膚障害を改善する効果があることを見出した。本研究課題では、その機序を解明することを目的として、マウス活性化T細胞に対するトマトサポニンEsA及びそのアグリコンEsculeogenin A(Esg-A)の影響について検討し、今年度は下記の研究実績を得た。 ① マウス脾臓由来Th1細胞の遺伝子発現に及ぼす影響: 選択的T細胞マイトジェンのコンカナバリンA (ConA)刺激によりTh1サイトカインであるIFN-γ遺伝子、Th1細胞転写因子であるTbx21の発現をそれぞれ増加させた。ConAのみ処置したcontrolと比較して、EsA, Esg-Aを加えた場合、IFN-γ,Tbx21の発現を濃度依存的に抑制した。② Th2細胞の遺伝子発現に及ぼす影響: ConA刺激によりTh2サイトカインであるIL-4、Th2細胞転写因子であるGata3の発現をそれぞれ増加させた。ConAのみ処置したcontrolと比較して、EsA, Esg-Aを加えた場合、IL-4, Gata3の発現を濃度依存的に抑制する傾向を示した。③ Tregサイトカインの産生、マスター転写因子の分化に及ぼす影響: ConA刺激によりTregサイトカインであるIL-10の遺伝子発現を上昇し、EsA, Esg-Aにより減少させた。一方、ConA刺激により活性化T細胞及びFoxp3+T細胞の割合を増加させ、EsA, Esg-Aを加えた場合、それぞれ濃度依存的に有意に抑制させた。 以上のように、完熟トマトサポニンEsAとそのアグリコンEsg-Aは、炎症性サイトカインを抑制し、Th1, Th2, Tregを制御している。
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