研究課題/領域番号 |
19K07156
|
研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
周 建融 崇城大学, 薬学部, 講師 (30454953)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | トマトサポニン / 制御性T細胞Treg / NF-κB |
研究実績の概要 |
アレルギー疾患は、アレルゲンに対して免疫が過剰に反応することにより起こるが、私たちが着目した制御性T細胞(Treg)は過剰な免疫応答を抑制し、免疫応答のバランスを調節する働きがある。よって、Tregを増強できればアレルギー疾患の治療に結び付くと考えられる。また、T細胞内において、炎症反応に関与するNF-κBシグナル経路が存在するが、NF-κBシグナルの減衰は、機能と安定性を高めたTreg (iTreg)の生成に関与するという報告がある。 本研究課題では、完熟トマトサポニンのマウスアトピー性皮膚炎の改善効果に関する機序を解明することを目的としている。令和4年度は、マウス脾臓由来T細胞を用い、Tregの機能および炎症反応を誘導するNF-κBを指標にし、フローサイトメトリー測定やウエスタンブロッティング解析により、トマトサポニンEsA及びそのアグリコンEsg-Aの影響について検討した。その結果、EsAとEsg-Aは、刺激なしのT細胞においてTregの割合の増加を示した。これより、EsA, Esg-Aには免疫応答のバランスを調節する働きがあり、アレルギー疾患の予防につながる可能性があると考えられる。また、anti-CD3刺激時において、NF-κBおよびリン酸型NF-κBの発現が抑制され、Tregの割合は増加傾向を示したことから、炎症反応の誘導時には、NF-κB発現を減少させることで、よりTregの機能を高めている可能性があると考えられる。今後、さらなる検討を重ねることにより、トマト成熟果実の主成分であるEsA, Esg-Aの作用機序の解明につながり、アレルギー疾患の予防や治療となる食物成分として期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度は、トマトサポニンとそのアグリコンは、獲得免疫における炎症因子を抑制し、Tregを制御していることを見出した。しかしながら、自然免疫の指標としてのマウス骨髄系樹状細胞の数が少なく、自然免疫に及ぼす影響に関する研究は、進捗がやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、NF-κBの阻害タンパクであるIκBへの影響やT細胞内において炎症応答に関与する他の経路への影響を検討する。また、マウス骨髄系樹状細胞をうまく培養し、自然免疫担当細胞に対する完熟トマトサポニン及びそのアグリコンの影響について、少しずつ進めていきたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
自然免疫の指標としてのマウス骨髄系由来樹状細胞の数が少なく、自然免疫に及ぼす影響に関する研究の進捗がやや遅れているため。 今後、マウス骨髄系樹状細胞をうまく培養し、自然免疫担当細胞に対するトマトサポニン及びそのアグリコンの影響について、着実に進めていきたい。さらに、獲得免疫ならびに自然免疫担当細胞における細胞内シグナル伝達に対するトマト天然配糖体とそのアグリコンの細胞内メカニズムを検討する。
|