研究実績の概要 |
アレルゲンに対して免疫系が過剰に反応することにより、アレルギー性疾患は起こる。自然免疫と獲得免疫の橋渡しをする樹状細胞は、抗原を貪食し、MHCⅡ分子及び補助刺激分子CD86の発現により抗原提示を行い、T細胞を活性化する。 本研究課題では、完熟トマトサポニンEsculeoside A (EsA) のマウスアトピー性皮膚炎の改善効果に関する機序を解明することを目的としている。令和5年度は、BALB/cマウス大腿骨より骨髄細胞を採取し、GM-CSFにより一週間分化誘導した。初代培養樹状細胞を回収し、EsAとそのアグリコンEsculeogenin A (Esg-A)添加後にリポ多糖LPS刺激を加えて1日培養した。その後、回収した細胞上澄みはELISA法を用いて炎症性サイトカイン産生量の測定を行い、細胞はCD86、MHCⅡ分子の発現と貪食能をフローサイトメトリー (FACS)によって測定し、樹状細胞の成熟化に対するトマトサポニンEsA の影響について検討した。その結果、樹状細胞表面のMHCⅡ分子とCD86の発現及び炎症性サイトカインIL-12とTNF-αの産生は、LPS刺激によりそれぞれ増加したが、EsA, Esg-A添加によって、濃度依存的に抑制する傾向を示した。また、LPS刺激により低下した貪食能は、EsA, Esg-A添加によって、増加する傾向を示した、さらに、in vitroにおける樹状細胞での抗原提示に対しても、減弱効果があることを発見した。今後、さらなる検討を重ねることにより、トマト成熟果実の主成分であるEsAとEsg-Aの作用機序の解明につながり、アレルギー疾患の予防や治療となる食物成分として期待される。
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