研究課題/領域番号 |
19K07157
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研究機関 | 公益財団法人微生物化学研究会 |
研究代表者 |
山崎 洋子 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所 沼津支所, 研究員 (80342690)
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研究分担者 |
百瀬 功 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所 沼津支所, 主席研究員 (10270547)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | c-myc / 合成致死 / 乳がん |
研究実績の概要 |
探索研究はMCF-7とHs578Tの2つのヒト乳がん細胞株を用いて行い、c-Myc発現が高いMCF-7においてはsiRNAを用いてc-Mycをノックダウンさせた細胞をスクリーニングごとに作成し、c-Myc発現が低いHs578Tにおいてはレンチウイルスを用いて恒常的にc-Mycタンパク質を過剰発現させた細胞を使用してそれぞれコントロール株と細胞毒性を比較することにより行なった。本年度は放線菌培養液、冬虫夏草培養液、ケミカルライブラリーに加えて、標的分子が特定されている阻害剤190種を用いてc-Myc依存的細胞毒性を評価した。また、スクリーニングに使用した細胞株に加えて、乳がん細胞株T47D、 MDA-MB-453、MDA-MB-468においてsiRNAを用いてc-Mycをノックダウンさせ、逆に乳がん細胞株MDA-MB-231、MDA-MB-468でレンチウイルスを用いて恒常的にc-Mycタンパク質を過剰発現させた細胞を作成し、昨年度同定した活性物質Xを評価した。その結果、XはMDA-MB-468 においてもc-Myc依存的細胞毒性を示すことが明らかになった。また、作用機序が明確な低分子阻害剤を使用した解析により、docetaxel、vinblastine、paclitaxel、nocodazolなどの微小管に作用する薬剤はc-Myc依存的細胞毒性を示すことが明らかになった。 さらに、ヒット化合物の抗腫瘍効果をin vivoで評価するため、マウスにHs578T、Hs578T-mockおよびHs578T c-Myc過剰発現細胞を移植し、造腫瘍性を検討した。その結果、Hs578Tはマウスへの生着が難しく、c-Myc過剰発現細胞のみがマウスに移植可能であった。 同時に平行して行なっているスクリーニングでケミカルライブラリーから強いc-Myc依存的細胞毒性を示す化合物を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
探索研究は順調に進んでいるが、精製に進むほど強力な活性を示す微生物培養液には遭遇していない。しかしながら、ケミカルライブラリーを用いたスクリーニングにおいてMCF-7およびHs578Tの両方の細胞においてc-Myc過剰発現細胞へ強い細胞毒性を示す化合物を同定した。また、Hs578T細胞はマウスへの移植可能な細胞株という論文報告がされているが、BALB/nu-nuマウスに生着することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
得られたc-Myc依存的細胞毒性を示す低分子化合物のin vivoでの抗腫瘍効果を評価するため動物モデルを構築する。BALB/nu-nuマウスを用いてトリプルネガティブ乳癌細胞株Hs578Tの造腫瘍性試験を行なったが、c-Mycを導入した細胞のみがマウスに生着し、コントロール細胞はマウスで増殖することができなかった。論文報告では Hs578T細胞はマウスに移植可能であることからHs578T細胞を購入し直して再度BALB/nu-nuマウスに移植し、造腫瘍性を確認する。また、BALB/nu-nuマウスに生着しなかった場合、より免疫力が弱く異種細胞の移植に対する拒絶が少ないマウスであるNOD/SCIDマウスを用いて造腫瘍性試験を試みる。また、必要であれば生着した細胞をin vitro戻し増殖させ、再びマウスに移植することで造腫瘍性を示した細胞の濃縮を図る。 また、今年度新たにケミカルライブラリーからc-Myc過剰発現細胞に対して選択毒性を示す化合物を発見したので、この化合物を10段階希釈して経口、経静脈、腹腔内投与でマウスに投与し毒性を調べる。2週間体重の変化と生死を観察し、マウスにおけるLD50を割り出し、死亡しなかったマウスも犠牲死させて各臓器に異常がないか解剖実験を行う。得られたLD50値からマウスを用いた抗腫瘍活性の評価の投与ルート、投与量、投与スケジュールを決定する。また、Hs578Tを用いたマウスにおける抗腫瘍活性の評価系の構築に時間がかかることが予想されるため、他の細胞でも活性がみられるかどうか確認し、活性が認められた細胞を用いてマウスでの評価系の構築も検討する。 探索研究は引き続き行い、より強い活性を示す物質の取得に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の影響で参加予定の学会がオンライン参加になったため差額が生じた。使用しなかった差額は来年の実験に充てる。
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