研究課題/領域番号 |
19K07158
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
本間 真人 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90199589)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | エルトロンボパグ / 血中濃度 / 肝機能障害 / TDM |
研究実績の概要 |
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)に用いるトロンボポエチン受容体作動薬のエルトロンボパグ(EPAG)の血中濃度と効果(血小板:PLTの上昇)、副作用(主に 肝機能障害)との関連を調査した。EPAGの血中濃度測定法を開発し、治療薬物モニタリング(TDM)への応用を試みた。 血清EPAG濃度測定には独自に開発した高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた。血清の前処理は徐タンパク操作のみであり、内部標準物質にはジクロフェナクを用いた。 EPAGを投与したITP患者49名を対象に追跡調査を行ったところ、22名(45%)が投与開始54(5~653)日に肝障害(grade 1/2/3<; 14/4/4) を発現した。EPAG投与前のPLTは肝障害群と非肝障害群の間で差はなかったが、投与後の最大PLTは、肝障害群(肝障害時)で有意に低く(108:12~268 vs. 172:4~687、p<0.05)、肝障害時にEPAGの効果が減弱すると考えられた。23名(肝障害群13名、非肝障害群10名)を対象に血中EPAG濃度を測定したところ、肝障害群(肝障害時)で有意に高いことを確認した(2.5[0.2-21.4]vs. 1.3[0.3-6.8]μg/mL, p<0.01)。肝障害時の血中濃度上昇のい要因として、1)肝障害によりEPAGの肝クリアランスが低下したこと、2)PLTの上昇が見られない患者(EPAGに感受性が低い)に対して行った増量に伴い血中濃度が上昇した、の2点が考えられる。これらのいずれかに基づくかは、症例によって異なると予測している。ROC解析で求めた、肝障害に関連する血中EPAG濃度のカットオフ値は2.9 μg/mLであり、この濃度を越えると肝障害の発現リスクが高まると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
単施設において希少疾患であるITP患者をこれ以上集積することが困難であった。また、コロナ禍により、共同研究施設への立ち入りが制限されたため、当該施設において新規の患者を確保することも困難であった。年度途中でHPLCの故障が発生したこと、測定を担当していた学生の入校制限も研究の遅れに関係した。
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今後の研究の推進方策 |
EPAGの血中濃度データや肝障害に関連する血中濃度のカットオフ値の検証には一定の症例数を確保する必要がある。現在モニタリング中の患者については、可能な限り継続してデータの収集を行うとともに。EPAGの適用が拡大された貧血患者にも研究対象を拡大し、上記データの検証を行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で対象患者の症例集積が困難となり、解析に必要なデータを確保できなかった。また、採取した血液検体についても継続して測定することが困難であった。 次年度は、採取した検体の測定を行うとともに、さらなる症例集積と検体の確保を行い、これまでに得られた結果を検証するとともに、検証結果を学会や論文として公表する。 次年度の研究費の使用計画として、検体測定費用(EPAG測定に必要な器具、備品、試薬など)、学会発表(参加費など)、論文作成費用(英文校閲や投稿料など)等に当てる。
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