研究実績の概要 |
Tofacitinibの時間薬理学的有用性が、薬物の体内動態によるものであると考え、5または17時にTofacitinib (15 mg/kg) を単回投薬し、血漿中Tofacitinib濃度を測定した。投薬4時間後までの血漿中Tofacitinib濃度及びAUC0-4hには、両群間で有意な差異はなかった。さらに、時間が経過すると、投薬8時間後において、5時投薬群の血漿中Tofacitinib濃度は、17時投薬群と比較して有意に高かった。投薬後4時間目から8時間目のAUC4-8hを算出すると、5時投薬群は17時投薬群と比較し約2.1倍高かった(P < 0.01) 。測定期間におけるAUCは、5:00投薬群と比較し、17:00投薬群で高かったため、5時投薬で高い抗リウマチ効果が得られたTofacitinibの薬効を薬物体内動態では十分に説明することができなかった。 次に、Tofacitinibの作用部位の一つであるJAK1タンパク質の日周リズム解析を行うために、6時点 (9時, 13時, 17時, 21時, 1時, 5時) で脾臓を採取し、Western blot法を用いて、各時点におけるJAK1タンパク質量を測定した。その結果、JAK1タンパク質量は、21時にピーク、9時にトラフとなる周期変化がみられた。この周期性変動と、薬効との関連には、十分な関連性が確認できず、詳細な検証が今後必要であると考えられる。 過去の実験成果より、IL-6など種々の炎症性サイトカインは、マウスやラットにおいて、暗期後半(5時)から明期前半(9時)にかけて高値を示すことが知られている。これらが高いときに、Tofacitinibを投薬すると高い効果が得られらため、サイトカインが高濃度で存在するタイミング(時刻)で投薬すると、効果が高まりやすいのかもしれない。
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