研究課題
本研究は、腸内細菌叢の分布に変化をおよぼす薬剤の服用が食物抗原タンパク質の消化管吸収や抗原の感作に与える影響を分子・細胞レベルで明らかにすることを目的とする。昨年度の解析で、バンコマイシン(VCM)をラットに強制経口投与する方法では、腸内細菌の16S rDNA量や卵白アルブミン(OVA)の感作に変動が認められなかった。本年度は、ラットをVCM単独または3種の抗菌薬カクテル(VCM、アンピシリンおよびカナマイシン)を混合した飲水で飼育する方法により、抗菌薬の投与が腸内細菌叢と抗原感作をどのように変動させるのかを解析した。4週齢の雌性BNラットにVCMを投与した場合、投与開始8週間目にBacteroidesとClostridiumの16S rDNA量が30-40%程度開始前よりも減少傾向を示した。一方、E.coliやEnterococcus、Lactobachillusの16S rDNA量には変動が認められなかった。また、カクテル群では、BacteroidesとE. coliの16S rDNA量が開始前よりも40%-50%程度の上昇傾向、Clostridiumは30%程度の減少傾向をそれぞれ示した。このとき、EnterococcusとLactobachillusでは顕著な変動が認められなかった。これらのラットに対して、抗菌薬の投与開始日より週に1回の頻度で計3回OVAをアジュバントとともに腹腔内投与した。その結果、OVAの投与開始2週目にVCM群とカクテル群のOVA特異IgE抗体価はコントロール群よりも高い傾向を示したが、8週目に両抗菌薬群のIgE抗体価はコントロール群よりも低い傾向を示した。この要因は明らかではないが、今後、例数を増やして再解析を行う必要があると考える。また、抗菌薬やOVAの投与の時期、アジュバントの有無を考慮して、同モデルにて再度解析を行う予定である。
3: やや遅れている
抗菌薬の投与による腸内細菌叢の変動および抗原特異IgEの上昇度に個体差が大きく、例数を増やした再解析が必要であるため。
例数を増やして本年度得られた結果の再現性を確認するとともに、抗菌薬の投与時期やアジュバントの有無を考慮して、抗原感作と抗原吸収に対する影響を解析する予定である。
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Allergy
巻: 75 ページ: 1414~1422
10.1111/all.14182