研究課題
本研究の目的は、腸内細菌叢の分布に変化をおよぼす薬剤の服用が食物抗原タンパク質の消化管吸収や抗原の感作に与える影響を分子・細胞レベルで明らかにすることである。初年度(R1年度)の解析では、リアルタイムPCR法による腸内細菌叢の16S rDNAの定量条件を確立し、バンコマイシンの服用による腸内細菌叢の変動をラットモデルで解析する実験系を確立した。また、R2年度の解析では、バンコマイシン単独または3種の抗菌薬カクテル(バンコマイシン、アンピシリン及びカナマイシン)を溶解した飲水で飼育したラットに対して、抗菌薬の投与開始2日後より週に1回の頻度で計3回、卵白アルブミン(OVA)をアジュバントとともに腹腔内投与した。その結果、OVAの投与開始8週目に両抗菌薬投与群のOVA特異IgE抗体価は、通常の飲水投与群よりも低下傾向を示すことを明らかにした。本年度(R3年度)は、同条件で例数を増やして再現性を確認するとともに、抗菌薬の一部変更とアジュバントの有無を考慮して、同モデルにて再解析を行った。最初に、R2年度と同条件で解析を行った結果、OVAの投与開始8週目に両抗菌薬投与群のOVA特異IgE抗体価は、通常の飲水投与群よりも低下傾向を示した。この結果から、昨年度の再現性を確認することができた。さらに、抗菌薬カクテルよりカナマイシンを抜き、Clostridium及びBacteroidesに対する抗菌作用のあるメトロニダゾールを添加して、アジュバントフリーの条件で、同様に解析を行った。その結果、抗菌薬カクテル投与群では、以前の抗菌薬カクテル投与群と同様に、通常飲水群よりも低いOVA特異IgEの抗体価を示した。これらの結果は、ラットモデルにおいて、抗菌薬の投与による腸内細菌叢の分布変動は抗原感作を抑制することを示唆するものである。
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