研究課題/領域番号 |
19K07165
|
研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
芳地 一 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (00219156)
|
研究分担者 |
坪井 一人 川崎医科大学, 医学部, 講師 (80346642)
竹之内 康広 川崎医科大学, 医学部, 助教 (30582233)
山野 由美子 神戸薬科大学, 薬学部, 准教授 (50208831)
小坂 信二 香川大学, 医学部附属病院, 教授 (70861102)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 疼痛 / 炎症 / 脂質 |
研究実績の概要 |
神経因性疼痛は長期間持続する難治性の疼痛であり、治療薬の開発が急務である。脂肪酸アミド化合物の一種であるパルミトイルエタノールアミドは、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体PPARαに対するアゴニスト作用などの機序により神経因性ないしは炎症性疼痛に対して抗炎症・鎮痛作用を示す薬物である。しかしながら、その作用は強くなく、さらに体内で脂肪酸アミド加水分解酵素やN-アシルエタノールアミン酸性アミダーゼにより速やかに加水分解されて活性を失うことが知られ、臨床応用上の問題となっている。本研究課題ではパルミトイルエタノールアミドの化学構造を修飾することで、分解されにくく強力な抗炎症・鎮痛作用を有する新規抗分解性脂肪酸アミド化合物を創製することを目的とする。 本年度においては、パルミトイルエタノールアミドを加水分解する酵素として、新たに酸性セラミダーゼを見出した。本酵素は前駆体として翻訳された後に、自己触媒作用によりペプチド鎖が切断されてヘテロダイマーから成る成熟体に変換する。そこでまず、N末端にFLAGタグを付加した酸性セラミダーゼをヒト胎児腎臓HEK293T細胞に強制発現させ、培養上清から前駆体を抗FLAG抗体アフィニティーゲルを用いて精製した。pH 4.5の緩衝液中で6時間処理することで成熟体を調製した。この標品を、放射標識したパルミトイルエタノールアミドとpH 4.5で反応させ、薄層クロマトグラフィーで解析したところ、230 nmol/min/mg蛋白質の分解活性を認めた。同種の脂肪酸鎖を含有するセラミドであるN-パルミトイルスフィンゴシンに対する活性を同様に検討したところ、43 nmol/min/mg蛋白質であり、パルミトイルエタノールアミドに対する活性の方が5.3倍高かった。従って、本研究で開発する化合物を分解する酵素として、酸性セラミダーゼを考慮する必要性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画のうち、項目「加水分解酵素に対する感受性の検討」について、酸性セラミダーゼの関与を示唆した。化合物のスクリーニングに向けての準備を進めており、おおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
項目「加水分解酵素に対する感受性の検討」について、酸性セラミダーゼの役割が明らかになりつつあり、酸性セラミダーゼのハイスループットアッセイを確立してスクリーニングを行う。項目「受容体に対するアゴニスト活性の検討」についても、前年度にレポータージーンアッセイの実験系が確立したのでスクリーニングを行う。他の項目についても順次、研究を進める予定である。
|