研究課題
神経因性疼痛は持続性の難治疼痛であり、治療薬の開発が急務である。パルミトイルエタノールアミド(PEA)は、炭素数16の飽和脂肪酸であるパルミチン酸とエタノールアミンが縮合した脂肪酸アミド化合物であり、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体PPARαに対する活性化作用などの機序により神経因性ないしは炎症性疼痛に対して抗炎症・鎮痛作用を示す。しかしながら、その作用は強くなく、また体内で複数の酵素により速やかに加水分解されることが知られ、臨床応用上の問題となっている。本研究課題ではPEAの構造の改変により、分解されにくく強力な新規抗分解性化合物を創製することを目的とする。まず、セラミド加水分解酵素として知られる酸性セラミダーゼが、PEAを加水分解することを見出した。すなわち、当該酵素の精製標品がPEAに対してセラミド(N-パルミトイルスフィンゴシン)より5.3倍高い活性を示すことを明らかにした。さらに、ヒト腎臓HEK293細胞に酸性セラミダーゼを過剰発現させると細胞内PEAが有意に減少すること、またヒト前立腺LNCaP細胞の内在性酸性セラミダーゼを発現抑制すると、細胞内PEAが増加することを明らかにした。従って、創製する化合物の分解酵素として酸性セラミダーゼを考慮する必要性が示唆された。次に、種々のPEA類縁体のPPARα活性化能を評価した。その結果、PEAのエタノールアミン部分の炭素鎖を1,2炭素延長すると同活性化能が増大することが判明した。また、パルミチン酸部分を炭素数18の一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸に置換しても同活性化能が増大した。そこで、これら2つの特徴を有するオレオイルブタノールアミド(OBA)を評価したところ、強いPPARα活性化能を有していた。今後、OBAをリード化合物として、酸性セラミダーゼも含めた酵素に対する抵抗性を考慮しつつ、より強力な化合物を創製したい。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件)
Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Molecular and Cell Biology of Lipids
巻: 1866 ページ: 158972
10.1016/j.bbalip.2021.158972
Cancer Science
巻: 112 ページ: 4570~4579
10.1111/cas.15123
Molecules
巻: 26 ページ: 5213
10.3390/molecules26175213
Journal of Lipid Research
巻: 62 ページ: 100141
10.1016/j.jlr.2021.100141