研究課題
糖尿病患者においては、血糖値の異常が持続すると、たとえその是正がなされたとしても、“メタボリックメモリー”として身体に記憶され、糖尿病合併症の発症・進展に関わる。しかしながら、未だメタボリックメモリーを定量的に評価することはできておらず、その詳細は不明である。本研究では、メタボリックメモリーと糖尿病合併症発症・進展との関係を明らかにするために、糖尿病患者の臨床データの収集及び血液サンプルの取得(各種バイオマーカーの測定用・糖尿病及び糖尿病合併症に関わる各種遺伝子型判定用)を実施し、以下の検討をおこなった。1.糖尿病患者におけるHbA1c高値の持続(血糖値異常の蓄積)が糖尿病性腎臓病の発症に関わるか否かを明らかにするために、2型糖尿病患者を対象に、HbA1cの継時的変化を基に、HbA1cの曲線下面積(AUC)を算出し、推定糸球体ろ過量(eGFR)の継時的変化(低下)との関係を検討した。その結果、HbA1cのAUCがeGFRの年間低下量に関わることを確認した。2.血糖値のメタボリックメモリーには、上記の血糖値異常の蓄積以外に、血糖値の上下動の大きさが糖尿病合併症の発症・進展に関わるとされる。そこで本研究では、糖尿病患者のHbA1cの上下動の持続が、糖尿病性腎臓病の発症に関わるか否かについて、2型糖尿病患者を対象に検討した。その結果、糖尿病患者のHbA1cの上下動の持続が、HbA1c高値の持続とは独立して、蛋白尿の発現に関わることを確認し、腎機能への影響が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
これまでに、糖尿病患者の検体採取・データ取得は順調に進んでおり、取得済みデータについては、血糖値異常の蓄積の定量化、血糖変動の定量化は終了した。また、モデリング&シミュレーション解析を行うための準備を進めており、治療薬等の各種データを組み込んだデータセットを作成した他、糖尿病合併症の発症・進展に関わる遺伝子型判定等も実施した。解析についても順次進めており、メタボリックメモリーと糖尿病合併症発症との関係を示唆する予備的データを取得した。
引き続き、糖尿病患者の検体採取・データ取得を実施していく他、eGFRの変化を予測するためのモデリング&シミュレーション解析を非線形混合効果モデルを用いて実施する予定である。また、血糖値以外の血圧・脂質パラメータのメタボリックメモリーについても順次検討する予定である。
新型コロナウイルスの感染拡大により、本研究課題に関わる出張が中止となったため、次年度使用額が生じた。なお、次年度使用額は本研究課題で新たに対象患者のバイオマーカー測定を行う予定としているため、その費用(ELISAキット:消耗品費)として使用する。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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