研究課題
本研究では、血液悪性腫瘍患者における発熱性好中球減少症(FN)に対して感染症を鑑別でき、かつ予後を予測できる新規バイオマーカーとしてのmid-regional pro-adrenomedullin(MR-proADM)の有用性を検討することを目的としている。令和2年度の研究実績は以下のとおりである。本研究の対象は大分大学医学部附属病院血液内科病棟にて、造血幹細胞移植を予定している血液悪性腫瘍患者としている。対象患者より文書による同意取得後、好中球数が500/μL未満となりFNの診断を満たした時点から採血を開始した。なお、採血は通常診療の朝の採血時に、研究用としてEDTA含有の採血管に静脈血3 mLを追加で採取した。通常、日常診療の採血は2日に1回であるが、医師の判断より連日採血が可能な場合は連日採取とした。採取後の血液は遠心分離し、血漿を分注後、-80℃で冷凍保存した。現在までに、14症例のエントリーを行い、合計80検体を回収済みである。このうち7症例については、昨年度申請者が確立した特異度の高い超高速高分離液体クロマトグラフ-タンデム型質量分析装置(UHPLC-MS/MS)を用いて血漿中MR-proADM濃度の測定を実施した。その結果、FN発症に伴い血漿中MR-proADM濃度は上昇傾向にあったが、そのベースラインおよび上昇度には個人差が認められた。引き続き、血漿中MR-proADM濃度の測定はUHPLC-MS/MSを用いて実施し、その推移を他の感染症に関するバイオマーカー(白血球数、C-反応性タンパク質、プロカルシトニン、プレセプシン)の推移と比較する予定である。
2: おおむね順調に進展している
患者リクルートを開始し、現在までに14症例回収できている。月に1~2症例程度、造血幹細胞移植を実施予定の患者がいるため、血液悪性腫瘍患者におけるFN発症後の血漿中MR-proADM濃度の推移に関する検討を行うための目標症例数20例については、令和3年度早期に達成できると予想される。
血液悪性腫瘍患者におけるFN発症後の血漿中MR-proADM濃度の推移に関する検討を行うための症例のリクルートを完了する。目標が20例であるため、令和3年度中に達成できると予想される。血漿中MR-proADM濃度については、随時UHPLC-MS/MSを用いた測定を行い、プロカルシトニンおよびプレセプシンについては目標症例数が達成した後、ELISAを用いてまとめて測定する。なお、白血球数およびC-反応性タンパク質については、日常診療にて測定されたデータを電子カルテより抽出し用いる。血漿中MR-proADM濃度と他の感染症に関するバイオマーカーの推移との比較を行い、論文化を検討する予定である。
MR-proADMの測定が当初の予定よりやや遅れており、購入した消耗物品が当初の予定より少なくなり、次年度使用額が生じた。その費用を用いてMR-proADM標品、内標準物質、96 well固相抽出用MCX μElution plate、移動相用有機溶媒を購入する。また、ELISAを用いたプロカルシトニンおよびプレセプシンの測定については、サンプルリクルート完了後まとめて実施する予定であるため、今年度使用を予定している。さらに、令和3年度の結果について、論文投稿費および学会発表による旅費に使用する予定である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
J Pharm Biomed Anal
巻: 183 ページ: 113168
10.1016/j.jpba.2020.113168.