研究課題/領域番号 |
19K07168
|
研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
山本 聡 札幌医科大学, 医学部, 助教 (10588479)
|
研究分担者 |
小笠原 徳子 札幌医科大学, 医学部, 講師 (00438061)
高澤 啓 札幌医科大学, 医学部, 講師 (00593021)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | NIPSNAP / ミトコンドリア / mitophagy / マクロライド系抗菌薬 |
研究実績の概要 |
申請者がマクロライド系抗菌薬 (以下マクロライド)の結合タンパク質として同定したNIPSNAP1および2 (以下NIPSNAPs) は、マクロライドが持つ抗炎症作用の詳細を明らかとする上で重要なミトコンドリアタンパク質である。本研究では「NIPSNAPsの生体における根本的な機能は何であるか?」という問いを掲げ、NIPSNAPsの生理機能とマクロライドの抗炎症作用の分子機構を明らかにすることで、耐性菌出現・常在細菌叢撹乱といったマクロライド療法における臨床上の問題点を解決し、かつ慢性気道炎症に対する新規薬剤の創出に資する基盤研究を行う。本研究課題ではミトコンドリアタンパク質NIP-SNAPsによる(1) autophagyを介したミトコンドリアの品質管理機構 (2) 炎症性サイトカイン産生に関わるシグナル伝達経路の同定 (3) マクロライドとの結合様式の詳細を細胞生物、生化学、構造学的に明らかにし、ミトコンドリアーNIP-SNAPsーマクロライドの3者間の関連性を統合することで、マクロライドの抗炎症作用の全貌を解明する。 本研究課題を達成するために、申請者はNIPSNAPsのdouble欠損株を樹立し、炎症性サイトカインの産生能、RNA seq.など網羅的な解析をおこなった。またmitophagy誘導時におけるNIPSNAPsの発現変動、autophagy receptorなどの結合変化などを解析した。本年度は主にDKO細胞の樹立に加え、RNA seqによる網羅的解析に焦点を絞り、すでにこれまでに需要な知見をいくつか見出している。来年度は見出した知見を足がかりとして、解析を進める予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Knock out細胞の作成: 申請課題を遂行するために、NIPSNAP1および2のDouble Knock out(DKO)細胞をBeas-2B, A549, HEK293細胞を用いて樹立した。またmitophagyの可視化のため、mCherry-GFP-FIS101-152過剰発現株、parkin過剰発現細胞を樹立した。 課題(1)mitophagy誘導条件下において、顕著にNIPNSNAP1および2の発現量は減少したが、ホモログであるNIPSNAP3の発現量は変化しないことを見出した。申請者が見出したNIPSNAP1とP62との結合は、NIPSNAP3では確認されず、両者の結合はautophagy, mitophagy誘導条件において変化せず、加えてLC3との相互作用も確認されなかった。 (2) 炎症性サイトカイン産生に関わるシグナル伝達経路の同定 NIPSNAP1およびNIPSNAP2のDKO細胞を用いて、LPS刺激による炎症性サイトカインの誘導能を比較した結果、siRNA法を用いたknock down細胞で観察されたIL-8, IL-6の減少は確認されなかった。このことから、DKO細胞においてNIPSNAPsの機能を補完する遺伝子が発現していると予測し、WTおよびDKO細胞、DKOにNIPSNAPをそれぞれ発現させた細胞(DKO-NIPSAP1, DKO-NIPSNAP2), またNIPSNAP1と2を戻した細胞(DKO-DIN)の計5種類の細胞内における遺伝子発現変化をRNA seq.で解析した。その結果NIPSNAPの機能を補完しうる候補遺伝子を絞りこむことに成功している。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度までに解析に必要な実験系の構築、NIPSNAPのシグナル伝達経路を補完しうる分子を絞り込むことができた。本年度では、(1) NIPSNAP1およびNIPSNAP3のアミノ酸配列を比較し、P62に結合しないNIPSNAP1の変異体を作成する。またDKO細胞でのmitophagy能やミトコンドリアの機能を評価する。また昨年度に絞りこんだNIPSNAPの機能を補完しうる候補遺伝子について解析を進める。候補遺伝子をsiRNA法にてknockdownし、LPS刺激における炎症性サイトカインの誘導能を精査し、関連する遺伝子を決定する。さらにシグナル伝達経路を決定するために、現在ショットガン質量分析法の構築と最適化を行っており、測定系ができつつある。この測定系を用いてLPS刺激時において結合が変化するタンパク質群を網羅的に同定し、シグナル伝達経路の明らかにする。またマクロライド抗菌薬の結合領域の同定に向けて、遺伝子組替えNIPSNAPsの発現、精製を行い生化学的に結合様式、領域を同定する。
|