研究課題/領域番号 |
19K07170
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
田上 辰秋 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 講師 (10609887)
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研究分担者 |
尾関 哲也 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 教授 (60277259)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 3Dプリンター医薬品 / 個別化医療 / 坐剤 / グミ剤 / ナノメディシン / 院内製剤 / イオン液体 |
研究実績の概要 |
3Dプリンター医薬品のモデルとなる研究の成果として、今年度は主に以下のものについて報告を行った。 1.3Dバイオプリンター(半固形押出し方式)3Dプリンターを用いたナノメディシン徐放ゲルパッチの作製:①生体適合性の高い3Dプリンター用の新しい機能性インク材料として魚由来のゼラチンからなる半合成ポリマー(F-GelMA)を合成した。次にF-GelMAの粘性の低さを補うため、②粘性のある安全性が高い医薬品添加剤(CMC)を添加し、③ナノメディシンのモデルとしてドキソルビシン封入リポソームをインクに含有した。上記の3種のハイブリッドインクを用いて3Dプリンターで造形後、光重合させてパッチを作製した。このパッチはがんの外科手術の際に体内に埋め込むことを想定しており、リポソームの徐放デバイスとして期待される。 2.FDM方式3Dプリンターを用いた薬物イオン液体含有中空坐剤の作製:前年度の坐剤外殻のアイデアを発展させて院内製剤として検討されてきた中空坐剤に焦点をあてた。プリンター条件のパラメータ(密度や外殻の層数)を調製することで、外殻の強度や薬物の放出速度が制御できることを見出した。材料力学的性質を調査したところ強度に異方性があることを明らかにした。また、薬物イオン液体(常温溶融塩)を用い、イブプロフェンイオン液体とドンペリドンを充てんした小児用坐剤を考案した。 3.3Dバイオプリンター(半固形押出し方式3Dプリンター)を用いた小児用グミ製剤の作製:半固形押出し方式3Dプリンターはハイドロゲル・ペースト状のものをインクとして使用できることから、ゼラチンを基剤とした抗てんかん薬を含有する小児用グミ製剤を作製した。小児が好むような様々な形状や色のグミ製剤を作製することに成功した。既報との違い・改善点は、医薬品添加剤(HPMC)をインクに添加することで室温でも作製が可能となったことである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
3Dプリンター医薬品の実験系(製剤の作製だけでなく評価手法など)が確立されているため、当初予想したよりも早く研究が推進されている。実験計画は前倒しで遂行されており、現時点において、計画の遂行に大きな問題はないと考えている。 COVID19に伴う都市圏の緊急事態宣言のため、学生が通学できず研究ができなかった時期もあったが、在宅で行えるもの(文献検索や解析)と大学で行うもの(各種実験)に分けて工夫を行った。またCOVID19の影響のため、実験の遂行・実施についてはやはり不透明な部分が例年よりも多く苦労した。このため来年度は、これまで以上に実験計画について考慮する必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
3Dプリンターは、医薬品のものづくり研究に向いていることが改めて明らかとなった。 最終年度は、より画期的な医薬品を生み出すため異分野の要素を取り込んだ研究を行い、次の研究計画への足がかりとしたい。
最終年度では、3Dプリンター医薬品のモデルを発信するため、これまでの医薬品にはない剤形の調製に挑戦する。例えば、眼に適用する特殊な剤形を提案・調製する。また、3Dプリンターはオーダーメイド医薬品に適している一方で、従来の医薬品を比較して複雑であるため、様々な予測を行う必要がある。このため、機械学習を組み込んだモデルを用いた医薬品設計に関する研究を実施する。
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