研究課題
近年の癌治療法の進歩によって、遠隔転移が患者の予後を大きく左右する重要な因子となってきた。そこで、乳癌リンパ節転移モデルを用いて、その転移機構を明らかにし、新規転移抑制薬の開発を目指すことを本研究の目的とする。申請者が樹立した高リンパ節転移ヒト乳癌細胞株を移植することで、自然にリンパ節転移が生じる転移モデルを用いて、申請者は研究を行ってきた。このリンパ節高転移株MDA-MB-231-LN(MDA-LN)の同所性移植腫瘍内にリンパ管が多数存在することから、MDA-LN細胞はリンパ管新生因子を産生しているものと考えた。一方、このMDA-LN細胞から既知のリンパ管新生因子であるVEGF-C, -Dの産生を認めなかったことから、新たなリンパ管新生因子の産生が示唆された。本研究では新規リンパ管新生因子の探索を行う。その結果、転移メカニズムを解明、その治療標的分子の探索につなげる。2021年度にリンパ管内皮細胞株SVEC4-10を用いて、wound healing assayを行うことにより、親株と比して高転移株であるMDA-LN細胞の培養上清を添加することで、細胞遊走性が上がること見出した。また、多くの乳癌細胞株を用い、癌幹細胞性についてCD44R1 (v8-v10)の発現やside population細胞の有無などで検証したところトリプルネガティブ乳癌細胞株で癌幹細胞性が高いこと、中でもMDA-LN細胞で高いことが判明した。2022年度は細胞遊走活性がLYVE-1遺伝子導入HEK293細胞においてもMDA-LN細胞の培養上清添加で上昇することも見出し、この活性が抗LYVE-1抗体で中和されることから、この遊走活性にLYVE-1分子も関わることが判明した。ただ、培養上清の分画とその遊走活性との相関は見出すことができなかった。
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Biomedicine & Pharmacotherapy
巻: 153 ページ: 113363~113363
10.1016/j.biopha.2022.113363