研究課題/領域番号 |
19K07174
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
高橋 葉子 (遠藤葉子) 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (30453806)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ナノバブル / 多糖類コーティング / miRNA |
研究実績の概要 |
これまで、リポソームに超音波造影ガスを封入したナノバブルを開発し、超音波照射との併用により遺伝子・核酸導入および超音波造影を可能とする低侵襲的なデリバリーシステムを構築してきた。本課題では、核酸搭載、サイズ制御、ペプチド修飾の技術を融合した新規ナノバブルの開発、および脳梗塞治療への応用を目指している。ナノバブル表面へ核酸を搭載し、全身投与を介した導入を効率化するにあたり、カチオン性と比較して生体内安定性の高さを明らかとしているアニオン性のナノバブルを用いた核酸搭載法の開発に着手した。はじめに、アニオン性ナノバブルへ静電的に核酸を結合させるため、多糖類でのコーティングを試みた。予備検討により、ナノバブルへ多糖類溶液を添加、攪拌することで、表面電荷の増大および反転が認められており、当該年度はより詳細なコーティング条件の最適化を行った。また、安定性、表面電位、コーティングの可否等を指標にナノバブルの脂質組成の比較検討も行った結果、アニオン性脂質の至適含有率があることが示された。これらは、アニオン性ナノバブル表面へアニオン性の核酸を簡便に搭載可能とする技術であり、本課題の基盤となる重要な成果である。さらに、核酸搭載率の評価を行ったところ、多糖類を過剰に加え高い電位を有するナノバブルではなく、電荷の反転が生じる付近の電位を有するナノバブルにおいて核酸搭載率が増大することが明らかとなった。これは、溶液中の過剰な多糖類は、コーティングナノバブルへの核酸の結合において拮抗するためと考えられる。さらに、コーティングによるナノバブルの超音波応答性への影響は小さく、従来のナノバブルと同様にin vitroおける低侵襲的な核酸導入効果および超音波造影効果を有することを明らかとした。現在、ミキシング(高速攪拌)によるナノバブルのサイズ制御、およびペプチド修飾による標的指向性の付与を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の基盤技術となる核酸の表面搭載を可能とする多糖類コーティングナノバブルについて、至適な脂質組成および多糖類濃度等を明らかとした。表面のコーティングにより、超音波照射に伴うナノバブルの挙動が変化することで、核酸導入能が低下することも懸念されたが、その顕著な影響がないことも明らかとした。今後、サイズ制御やペプチド修飾に関する評価を進めるうえで、脂質組成やコーティング条件等の再検討が必要になることも考えられるが、その際に行うべきナノバブルの基本的な物性評価法についても確立できたといえ、順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ミキシング条件の最適化を進めることで、従来よりも粒径の小さいナノバブルの調製を試み、当該年度と同様に多糖類によるコーティングおよび核酸搭載の評価を行う。また、コーティングに用いる多糖類についても数種を比較検討することで、コーティング効率、核酸搭載率、安定性の高いナノバブルの開発に繋げる。さらに、ナノバブルの血管内投与後の体内分布について、超音波造影および蛍光イメージング等により評価する。ミキシングによるサイズ制御を施したナノバブルの脳内における到達領域が示された後、それに適した標的細胞(血管内皮細胞、神経細胞等)への指向性付与が可能なペプチドを選択し、表面修飾を試みる。ナノバブルの標的細胞に対する特異性について、フローサイトメトリー、蛍光顕微鏡、蛍光イメージング等により評価を行い、それらを指標に修飾条件の最適化を目指す。また、マウス脳への核酸導入効果の評価を進め、モデルマウスにおける治療効果の検討へと繋げていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度未使用による次年度使用額が一部あるものの比較的少額であり、おおむね当初の計画通りに使用している。2020年度請求額と合わせ、脳梗塞モデル構築のための各種実験器具・試薬、ペプチド修飾リポソーム調製のための数種のペプチド・脂質、合成miRNA、動物、解析用の各種試薬など、主に物品購入に使用する予定である。
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