前年度までに、生体内で安定なアニオン性ナノバブル表面への核酸搭載技術として、多糖類コーティングの有用性を示し、超音波併用によるin vitroでの核酸導入、高速攪拌(ミキシング)によるナノバブルのサイズ制御(平均粒子径減少と均一性向上)に成功した。2022年度は、核酸搭載ナノバブルのin vivoにおける評価、ミキシングナノバブルの超音波造影・核酸導入ツールとしての有用性評価を試みた。 多糖類コーティングによる核酸搭載ナノバブルの導入ツールとしての評価において、経頭蓋的超音波照射となる脳組織への導入の前に、超音波照射を施しやすく、かつ微小血管を有する担癌モデルを用いた評価を行った。その結果、搭載核酸による腫瘍の増殖抑制効果が示され、本法が全身投与による微小血管を介した核酸導入において有用となり得ることが示唆された。ペプチド修飾による脳組織への標的指向性付与、および多糖類コーティングによる核酸搭載を両立させ得るナノバブルの調製条件の検討までは至らなかった。また、ミキシングナノバブルの評価においては、超音波照射併用により、in vitroにおける核酸導入、in vivoにおける脳組織の造影および血液脳関門(BBB)の一時的な開口を可能とすることが示唆され、いずれもミキシングをしていない従来のナノバブルとは至適条件が若干異なることも示された。これは粒子径のほか、個数濃度の影響が大きいと考えられ、より詳細な検討を継続する必要があるといえる。 以上の結果は、本研究の目的の核となるアニオン性ナノバブルへの核酸搭載技術やナノバブルのサイズ制御技術の確立に繋がる重要な成果であるが、本研究期間内ではミキシングナノバブルによる脳組織への核酸導入や治療効果の評価までは到達しなかった。今後更なる条件最適化と技術の融合を進め、本法の脳梗塞治療における有用性評価に繋げていく。
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