研究実績の概要 |
当教室においてデザイン・開発されたLC/MS用誘導体化試薬 COXA-OSuは、COXA標識アミノ酸の安定性が乏しいという欠点があった。そこで、COXA標識体の不安定性の原因となっているオキサゾリジノン構造を、より安定なイミダゾリジノンに変換した新規化合物CIMa-OSuを合成したところ、安定性が改善された。加えて、CIMa-OSu標識アミノ酸の開裂パターンの検討より、1級アミン標識体でのみ [M-H] > [M-H-43] および [M-H-194] が生じ、既存のCOXA-OSuと同様のMS開裂の特徴が見られた。また、D-SerやD-Alaなどの微量D-アミノ酸も同時に定量が可能であった。さらに、CIMa-標識体を検出したクロマトグラムと、1級アミン特異的に検出([M-H] > [M-H-194])した両クロマトグラムを比較することでL-Pro等の2級アミン標識体のピークを容易に識別できた。本成果を論文投稿し、受理された(J Chromatogr A. 1652: 462341, 2021)。 続いて、ヒト血清より、市販キットを用いてエクソソーム顆粒画分を単離し、メタノール添加によりエクソソームの膜を破壊後、COXA-OSuと反応させ、LC-MS/MSにより分析した。D-およびL-アミノ酸組成を血清vs.エクソソームで比較解析し、エクソソーム特有の濃度の高い物質を見出した。アミノ酸以外のイオンピークについては、データベースを用いて化合物の構造推定や同定を試みた。既知物質として市販されていれば購入し、クロマトグラムの保持時間やMSスペクトルの開裂イオンパターンの一致を確認することにした。
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