研究課題/領域番号 |
19K07176
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
杉田 隆 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (10312076)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 細菌性膣症 / マイクロバイオーム / Lactobacillus |
研究実績の概要 |
細菌性膣症の発症が絨毛膜羊膜炎から切迫早産に進展するため、細菌性膣症の発症を制御することには予防および治療上の合理性がある。 抗菌薬による治療は、切迫早産期に優位となった切迫早産誘発膣内細菌(悪玉菌)の除菌が主眼であるため正常細菌マイクロバイオーム(善玉菌)の 破綻は避けられない。従って、健康なマイクロバイオームを再構築することは、切迫早産の予防治療上の科学的合理性がある。前年度は膣マイクロバイオームでは乳酸菌中のLactobacillus crispatusの占有率の上昇に伴いLactobacillus inersが減少する負の相関があることを明らかにし、同時にCandida albicansの占有率も高いことを示した。そこで本年度は、HeLa細胞にこれらの膣マイクロバイオームを感染させて細胞応答を調べた。HeLa細胞とC. albicansを共培養し、Lactobacillusの培養上清を摂取したところ、C. albicansの接着性は培養上清の濃度依存的に抑制された。また、HeLa細胞からの炎症性サイトカイン産生は抑制された。このことは、Lactobacillusの培養上清中には、膣の炎症を沈静化させる能力があることを示している。同様の現象は細菌性膣症の誘発が示唆されているGardnerella vaginalisによる炎症についても同様の作用を示した。Lactobacillusの中でこの炎症抑制作用が最も高い菌株を患者膣由来および保存ライブラリーから探索したところ、Lactobacillus MPU737株にその効果を見出した。今後のマイクロバイオーム療法の候補株となることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画は培養細胞を用いての細胞傷害性および免疫応答能の検討であったため、その目的を計画通りに達成できたと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
マウスモデルあるいは同等のモデルを用いて、本年度探索したLactobacillus MPU737株を用いて効果の検証を行う。同時に、当該菌株と相乗的な効果を示す菌株を加えたマイクロバイオームカクテルの作製を行うことにより臨床試験に向けた有用な情報を提供することを目的とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子発現解析試薬の一部は輸入品であるためCOVID19の影響により輸入が一時的に停止されたため入手不可となった。現在は入手できているので、計画的な研究の遂行上問題は生じていない。
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