研究課題/領域番号 |
19K07177
|
研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
佐藤 光利 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (60231346)
|
研究分担者 |
植沢 芳広 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (90322528)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 細胞画像 / 腫瘍細胞 / 機械学習 / 深層学習 / 細胞コロニー |
研究実績の概要 |
令和2年度は、異常細胞の検出方法を確立するために、正常培養細胞内にがん細胞を人工的に混入させて検出するモデル実験を試み、「正常細胞およびがん細胞共培養における3次元培養条件の確率および細胞画像取得条件の検討」について下記の研究成果を得た。 1.がん細胞を添加した正常細胞試料について足場非依存的コロニー形成試験条件検討:正常細胞にヒト胎児肺由来線維芽細胞(MRC-5)を用い、がん細胞にはGFPを導入したヒト子宮頸癌細胞株(HeLa-GFP)を用いた。本年度の研究によって、0.03%ポリマーLA717存在下では正常細胞の凝集および増殖の抑制が観察され、HeLa-GFP細胞では、足場非依存的増殖が認められ、高頻度でコロニーを形成した。また、MRC-5 20,000 cells/well中に HeLa-GFP 20~50 cells/wellの密度で細胞を播種した場合、画像を検討する際の培養条件として良いことが明らかになった。 2.異種細胞検出に関する撮像条件の検討:MRC-5のみおよびMRC-5+HeLa-GFPの共培養を3ウェルずつで実施し、各ウェルから20分おきに4日間連続的に画像を取得した。MRC-5のみのウェルから20箇所×3ウェル計60箇所を切り出し、MRC-5+HeLa-GFPの共培養のウェルからHeLa-GFPを含む領域10箇所×3ウェル計30箇所を切り出して解析画像とした。本研究では、コンピュータによる畳み込みニューラルネットワークを用いてこれらの細胞画像をパターン認識し、深層学習における学習率とバッチサイズを調整することによって予測精度の精緻化を試みた。培養日数が進むにつれて予測精度が高まり、異常細胞を検出するためのモデル系の有用性が示された。さらに、予測性の向上にはエッジ処理が有効になることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
再生医療に用いる細胞組織加工製品では、培養細胞が治療に用いられることから、形質転換細胞などの異常細胞の混入や発生リスクを回避するための異常細胞を検出する方法が必要となる。しかしながら、現時点ではこれらの異常細胞を高い精度で早期に検出するための方法は確立されていないのが現状である。そこで、本年度は、異常細胞の検出方法を確立するために、正常培養細胞内にがん細胞を人工的に混入させて検出するモデル実験を試みた。品質評価に応用可能な技術として、細胞培養条件を検討し、細胞の形状や微細構造、細胞の分化・増殖の挙動を顕微鏡画像として取得し、得られた画像を人工知能(AI)に学習させることによって正常細胞と異常細胞を識別するシステムを構築する検討を行うことで、高い精度の予測能を可能にすることを目標としている。令和2年度研究に関しては、交付申請書に記載した「研究目的」に基づいて研究がなされており、研究実績の概要に記載したように令和2年度研究成果は予定どおり達成されている。令和2年度に得られた研究成果については、日本薬学会第141年会にて学会発表を行ない、研究成果を報告した。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、本研究課題の最終年度であることから、研究代表者ならびに研究分担者による報告会をZoom等で定期的に実施し、交付申請書の研究実施計画に従うとともに、さらなる研究の進展をはかるために、今後も当初の研究実施計画に従って研究を実施していく予定である。本研究は、生化学的および遺伝学的手法による細胞組織研究を専門とする研究代表者とコンピュータによる解析を専門とする研究分担者による共同研究であり、研究代表者と共同研究者がそれぞれの研究領域で有用性が高い研究成果を得ることで、また密に連絡をとることにより研究を推進する。コロナ禍であるので、頻繁にメール会議を開催するなどの対応により本研究を遂行し、成果を得ていく。また、令和元年および2年度に得られた研究成果においてもデータを統合して学会発表を行ない、他施設の研究者とも情報を交換することにより研究を促進する。また、論文として公表することも予定しており、準備を進めている。 細胞組織加工製品を実際に使用するには様々な安全性に関する試験が必要になる。これまでの成果からさらに細胞組織の品質を保証する安全性試験も必要になるので高解像度画像解析技術を統合して、さらに学習・予測精度が高い手法についても検討していきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 研究代表者 佐藤光利 は、令和2年度研究結果発表のための旅費としてのみの使用であったため繰越金が発生した。また、分担研究者 植沢芳広 博士は、コンピュータを用いたデータ解析の条件検討を中心に行ない、令和2年度経費をすべて使用しなかったことにより繰越金が発生した。分担研究者は、すでに高性能なコンピュータおよび解析ソフトを保有しており、本年度はモデル研究による検討を中心に研究を実施したので経費は使用しなかった。 (使用計画) 令和3年度は、本研究課題の最終年度であるため実施計画に従った研究を遂行するとともに、補助金は主として成果発表のための旅費ならびに研究補助者雇用のための人件費・謝金として使用する。また、分担研究者 植沢芳広 博士 の令和2年度分担研究費残額は、令和3年度分担研究費および旅費、人件費として繰入れる。令和3年度は、本研究の最終年度であるため当初の計画どおり研究成果の報告とまとめとするので特に解決すべき課題等は無い。
|