研究実績の概要 |
令和3年度は、前年度に検討を行なった条件を用いて正常培養細胞内にがん細胞を人工的に混入させた3次元培養条件下で細胞画像を取得し、高性能コンピューターを用いたディープラーニング(DL)によって異種細胞検出に関する下記の研究成果を得た。 1.異種細胞検出に用いた細胞特性を示す最適培養条件:正常細胞にヒト胎児肺由来線維芽細胞(MRC-5)を用い、がん細胞にはGFPを導入したヒト子宮頸癌細胞株(HeLa-GFP)を用いた。0.03%ポリマーLA717を培地に存在させることにより、MRC-5の凝集および増殖を抑制することで、HeLa 細胞の足場非依存的増殖や活動性が認められ、MRC-5とHeLa 細胞では異なった特性を観察することが可能になった。MRC-5は、20,000 cells/well、HeLa-GFPは、20~50 cells/wellが、これらの細胞特性を示す最適培養条件として撮像を行なった。 2.ディープラーニング(DL)による異種細胞検出:MRC-5のみおよびMRC-5+HeLa-GFPの共培養を3ウェルずつで実施し、各ウェルから20分おきに4日間連続的に画像を取得した。MRC-5のみのウェルから20箇所×3ウェル計60箇所を切り出し、MRC-5+HeLa-GFPの共培養のウェルからHeLa-GFPを含む領域10箇所×3ウェル計30箇所を切り出して解析画像とした。さらに、画像のエッジ処理が予測性能の向上に有効であったことから、エッジ処理を行った画像を用いた。4日間の細胞培養で得られた細胞画像データセットを前期2日の画像と後期2日の細胞画像をパターン認識し、深層学習における学習率とバッチサイズを調整することによって予測精度を精緻化した。培養日数が進むにつれて予測精度が高まり、異常細胞を検出するための識別パフォーマンスの向上が明らかになった。
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