目的はマクロファージを標的とする輸血後鉄過剰症治療法の開発であり、①マクロファージのヘム鉄による細胞死を鉄キレート剤と協働的に抑制する薬剤を見つける、②フェリチン発現量の変動がマクロファージのヘム鉄による細胞死に及ぼす影響を調べる、をめざした。ヒト単球系培養細胞THP-1、ヘミン、無血清培地を用いることでヘム鉄の細胞死誘導を短時間で評価し、以下の成果が得られた。 2022年度までに得られた成果:1)ヘミンによるTHP-1細胞死誘導は、活性酸素種(reactive oxygen species; ROS)と不安定鉄プール(labile iron pool; LIP)の上昇を伴ったが、フェリチン量は不変であった(Imoto et al. Transfus Apher Sci. 2019; 58 (6):102662)。2)非ヘム鉄(クエン酸アンモニウム鉄)は細胞死を誘導せず、ROS、LIPは上昇せず、フェリチン量は増大した(Imoto et al. Transfus Apher Sci. 2022; 61 (2):103319)。 2022~2023年度に得られた成果:3)鉄キレート剤デフェラシロクス(DSX))は、低濃度(5μM)でもヘミンの細胞死およびROS産生を抑制した。4)トロンボポエチン受容体作動薬エルトロンボパグ(ETO)は、低濃度(1~4μM)でヘミンの細胞死抑制効果を示し、高濃度では細胞毒性を示した。5)スタチンは、ヘミンの細胞死誘導を抑制した。抑制効果はフルバスタチン(Flu)が最も強力であった。DSXとFluの併用は、単独よりも高いヘミン細胞死抑制効果を示した。5)ETOとFluの併用は、単独よりも高いヘミン細胞死抑制効果を示した。6)ETOとDSXを併用は、単独よりも高いヘミン細胞死抑制効果を示した。 成果3)~8)の論文発表を準備中である。
|