本研究の目的: 危険ドラッグによる痙攣発現メカニズムに関する詳細な研究を実施する目的で、代表的な危険ドラッグである合成カンナビノイドによる痙攣の発現強度を、客観的かつ定量的に測定する実験解析システムを開発する。初年度~2年度では、脳波の変化に着目して、マウス痙攣強度定量のための脳波解析システムを構築し、合成カンナビノイドを研究対象薬物として、合成カンナビノイドによる痙攣発現時ならびに無動状態の脳波変化と海馬および小脳内のグルタミン酸遊離変化について検討した。2021年度(3年度)については、合成カンナビノイドに加えてカチノン系化合物を研究対象薬物として、痙攣発現の有無について検討した。 (1)合成カンナビノイドによる痙攣発現とグルタミン酸遊離変化:ICRマウスを使用して、無麻酔・無拘束条件における脳内グルタミン酸変動を経時的に測定した。合成カンナビノイドの5F-AMB、AB-FUBINACA 投与による痙攣発現時のグルタミン酸遊離変化を検討したところ、海馬内グルタミン酸遊離は増加していた。 (2)カチノン系化合物による行動変化:カチノン系化合物 PVPの投与では運動促進作用が発現した。運動量亢進時のグルタミン酸遊離変化を検討したところ、海馬内グルタミン酸遊離に影響は認められなかった。同様に、小脳内グルタミン酸遊離も不変であった。 以上の結果から、危険ドラッグによる痙攣発現には、脳内グルタミン酸遊離の変化が重要であると考えられる。合成カンナビノイドによる痙攣発現には海馬におけるグルタミン酸遊離増加が重要な役割を果たしていることが明らかになった。また、カチノン系化合物では、痙攣発現よりも運動量の著しい増加が有意に発現することが明らかになり、中枢興奮作用についてはグルタミン酸遊離変化以外の神経伝達物質が関与するものと推察された。
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