昨年度に続き、エンテロイド内腔と細胞層とを区別する境界線の決定方法を検討した。蛍光物質をエンテロイド内腔に取り込ませた後、画像解析ツールを用いて自動輪郭決定する方法を改良した。蛍光顕微鏡のフルフォーカス明視野画像の濃淡を二値化、自動選択により輪郭を決定した後、この輪郭を蛍光画像に当てはめて蛍光強度を算出することにより、輪郭全体を捉えることができた。この際、膜透過性の蛍光物質を使用すると蛍光の消失が早く解析が困難となるため、新たに膜不透過性の蛍光試薬をエンテロイド内腔に注入するマイクロインジェクション法を考案した。これにより、内腔と細胞層との境界を客観的に区別しながら2Dで定量解析することが可能となった。 マイクロインジェクションが可能となったことから、吸収方向の物質の輸送(消化管管腔から血液側への輸送)を解析することが可能となった。トランスポーターの基質を注入する際は、試薬が内腔に到達したことが判断できるように、明視野で観察可能な色素とともに注入した。グルコース誘導体を用いた検討の結果、吸収方向のトランスポーターを介する輸送と、刷子縁膜、基底膜に発現するトランスポーターそれぞれの阻害剤の効果を確認することができた。また、阻害剤を管腔側あるいは基底膜側に添加して阻害剤の働きを解析したところ、いずれの阻害剤も基底膜側よりも刷子縁膜側(内腔側)に添加したときのほうが阻害の程度が大きく、阻害剤の作用には基質輸送の方向も関係していることが示唆された。
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