非定型抗精神病薬による血糖値異常のメカニズムを明らかにするために、以下の検討を行った。 ラットにパリペリドンを単回静脈内投与したところ、0.4 mg/kg以上の投与量で血糖値および血中アドレナリンの上昇が認められた。一方、0.2 mg/kgの投与量では血糖値およびアドレナリンの上昇は認められなかった。また、観察されたパリペリドンの血中濃度は、ヒトにおける治療レベルの血中濃度を包含するものであった。 最終年度は、パリペリドンによる血糖値上昇がアドレナリンによるものかを確かめるべく、β遮断薬であるプロプラノロールをパリペリドンと併用した際の血糖値変化を調べた。その結果、プロプラノロールはパリペリドンによるアドレナリン分泌に影響を与えなかったものの、パリペリドンによる血糖値上昇を抑制した。 さらに、パリペリドン―アドレナリン―グルコース濃度を関連付けたPK-PDモデルを作成したところ、各PDパラメータは既報と矛盾がなかったことから、モデルの有用性が示されたとともに、このモデルにより薬物単回投与後の血糖値変化を予測することができた。 以上の結果より、パリペリドン単回投与による血糖値上昇には、これまで我々の研究室で示した他の非定型抗精神病薬(オランザピン、クロザピン)と同様、アドレナリンが関与していることが示唆された。さらに、パリペリドンの治療域でも血糖値を上昇させる可能性があることから、パリペリドンをヒトに投与する際は注意深い血糖値モニタリングを行う必要があると考えられた。
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