研究課題/領域番号 |
19K07192
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
北村 佳久 岡山大学, 大学病院, 准教授 (40423339)
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研究分担者 |
浅沼 幹人 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (00273970)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ドキソルビシン / シクロホスファミド / 化学療法 / セロトニン神経系 / 5-HT2A受容体 / 5-HT1A受容体 |
研究実績の概要 |
これまで申請者はラットを用いた研究においてがん患者の精神的負担の原因の一部には抗がん剤投与による“ストレス脆弱性”の病態が関与しているとの作業仮説を立案するに至った。そこで、本研究では“ストレス脆弱性”の関与因子として知られている脳内トリプトファン経路であるセロトニン経路およびキヌレニン経路に着目し、「セロトニン-キヌレニンバランス破綻仮説」を基盤に病態解明を行うことを目的とした。本年度はこのセロトニン神経系に着目し検討を行った。実験にはWistar系雄性ラットに乳がんの標準的化学療法であるドキソルビシンおよびシクロホスファミドを1週間に1回、2週間投与を行い、最終投与の1週間後に行動薬理学的検討および生化学的検討を行った。行動薬理学的検討として、5-HT2A受容体作用薬である(±)-DOIを投与し、行動薬理学的に5-HT2A受容体機能を検討した。さらに、海馬および大脳皮質における5-HT2A受容体および抗不安効果に重要な役割を担っている5-HT1A受容体の発現量をwestern blotting法を用いて測定した。その結果、ドキソルビシンおよびシクロホスファミド投与により5-HT2A受容体機能は増強することを明らかにした。一方、5-HT2A受容体および5-HT1A受容体発現量は変化しなかった。本研究により化学療法による不安症状の発現には脳内5-HT2A受容体機能の亢進が関与している可能性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度は当初の予定通り、ドキソルビシンおよびシクロホスファミド投与による化学療法処置におけるセロトニン神経系の関与を行動薬理学的および生化学的に捉えることができ、計画通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
計画書通り研究を行っていく。まずは、抗がん剤投与によるセロトニン遊離機構の変化について明らかにする。すでに、セロトニン測定に関しては、HPLC-ECD測定法は確立しており、順調に研究が推移するものと考えている。また、本研究の抗がん剤投与によるセロトニン-キヌレニン破綻仮説を立証するために、キヌレニン測定を行い、精神機能変化におけるキヌレニンの関与について明らかにしていく。
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